2017年6月24日土曜日

『銀河帝国の興亡』第2巻/アイザック・アシモフ



はい、2巻です。(1巻の感想はこちら

間に別の本をはさむとあっさりお話を忘れてしまう私のような者のために、まず「プロローグ」という形で1巻のおさらいをしてくれます。親切。

二百年目の終わり頃には〈ファウンデーション〉は、天の川の第三中心部に集中して、いまなお宇宙の人口と富の四分の三を占める〈帝国〉の残存部分をのぞいては、銀河系の中で最強の国家にまでなっていた。 (P9)

全体は二つのお話に分かれていて、一つ目の舞台はシウェナ! 1巻でホーバー・マロウが訪れていた星です。四十年前のその訪問が「魔術師との遭遇」として語られるのです。

うぷぷ。

語り手はかつてマロウを迎えた男の息子。

「父は亡命中、一人の放浪者と出会いました。相手は〈銀河系〉の端から来た商人でした。奇妙なアクセントでしゃべる青年で、最近の〈帝国〉の歴史についてはかいもく知らず、個人用の力場防御壁(フォース・シールド)で身を守っていました」 (P23)

この年老いたシウェナ人デューセム・バーと、〈ファウンデーション〉の貿易商人ラサン・ディヴァーズが〈帝国〉相手にちょっとした冒険を繰り広げるんですが……。

すでに、〈帝国〉では「ハリ・セルダン」の名前が忘れられているし、

「〈ファウンデーション〉だと? それはなんだ?」
「わたくしは古い記録文書をたんねんに捜してみましたが、それについては何も記録が残っておりません、陛下」 (P54)

ええー、〈ファウンデーション〉のことも忘れられてるの? 記録を探してもないの??? 〈帝国〉の公文書管理ずさんすぎない?と思うけど、これはまぁわざとセルダンが「消した」のかもしれません。〈ファウンデーション〉に心理歴史学者を移住させなかったのと同様、彼の目的のためには自分達に関する資料を残さない方が都合が良かったのかも。

すっかり弱体化している〈帝国〉だけれども、中には有能な将軍もいて、有能というか「好戦的」とみなされて外縁星域に送られていたベル・リオーズという男が、〈ファウンデーション〉を攻撃し始めます。

リオーズの艦隊に攻め込まれて劣勢の〈ファウンデーション〉を救うべく、ディヴァーズとバーは帝国の首都たるトランターまではるばる乗り込んでいきます。その行程はなかなか面白く、どうなるんだ?と思うんですが。

どうともならないんですね。

彼らの「活躍」には意味がないんです。なぜなら

「死んだ手が、われわれ全部を押しているのです。あの強い司令官や、偉大な皇帝を、わしの世界とあなたの世界を――ハリ・セルダンの死んだ手がね」 (P132)

セルダンが、というより、人間の「心理のあや」で、強い将軍と強い皇帝は並び立たない。野心を持っていようといまいと、強い将軍は皇帝に疎まれ、排除される。〈ファウンデーション〉やディヴァーズとは無関係に。

ディヴァーズの「活躍」がけっこう面白かっただけに、このオチには「やられた」感がありました。しかも最後の最後、「もうこれ以上敵はないわけだ」と言う〈ファウンデーション〉の偉いさんに対して、「もしかすると、内部に敵がいますよ」と答えるディヴァーズ。

「たとえば、もう少し富の分散を望み、それが労働して獲得した者たちの手から抜け出して、あまりどこかに集中しすぎないようにしたいと思っている国民ですよ。わたしのいうことがわかるでしょう?」 (P135)

ふふふ。アシモフさん心憎い。

ってことで二つ目のお話は〈ファウンデーション〉の内乱の話になるのかと思ったら……。

「ミュール」という正体不明の敵が出てくる。
〈ファウンデーション〉の上層部に対する反乱の芽は確かにあったんだけれど、「ミュール」という敵が出てきたことで、それどころじゃなくなる。とにかく「ミュール」をなんとかして、〈ファウンデーション〉を守らなければ。

「突然変異体(ミュータント)」という噂だけがあって、誰もその顔を見たことがない「ミュール」。〈ファウンデ-ション〉に属する星々は次々に「ミュール」の軍門に降ってゆく。

〈ファウンデーション〉の危機。今回のこともきっとセルダンが予見していたはず。「時限遺品館」にセルダンの立体映像が出現するのを固唾を飲んで見守っていた〈ファウンデーション〉の人々。

けれども彼らは裏切られます。現れたセルダンは、「〈ファウンデーション〉は今はじめて内乱に直面したところだろう」などとピントのずれたことを言うのです。ミュータントという言葉など何一つ出てこない。セルダンは、「ミュール」への対処法など、まったく教えてくれませんでした。

果たして〈ファウンデーション〉は、生き残ることができるのか――!?

1巻の最初の方には書かれていなかった気がするんですが、〈ファウンデーション〉は実は二つ作られていました。もう一つの、便宜的に〈第二ファウンデーション〉と呼ばれるものの在りかは誰も知らない。2巻の一つ目のお話で、帝国の記録には〈第一ファウンデーション〉のことすら残っていませんでしたが、〈第二〉の方はさらに念入りに隠されていて、研究者が必死で調べてもなかなかわからない。

「ミュール」に対抗するためには〈第二ファウンデーション〉の存在に賭けるしかない。そしてもちろん「ミュール」の方もその情報を狙っている。

「ではよく注意して聞きなさい。〈第二ファウンデーション〉は精神科学者の世界だった。それはわれわれの世界を鏡に映したようなものだ。物理学ではなく、心理学が君臨していた」 (P351)

「それは今までひた隠しに隠されてきた。その秘密は、今後も守られなくてはならぬ。それなりの目的があるのだ」 (P357)

寝食を惜しんで調査研究に勤しんだ科学者がようやくその秘密にたどり着いた時、思いがけない結末が……。

ううむ、この終わり方もなかなか。

で、次の3巻目、ハヤカワ版ではずばり「第二ファウンデーション」となっていて、そちらへ舞台が移るよう。



〈第一ファウンデーション〉はミュールにやられたまま、もう復活しないのかな。

そしてセルダンの「死んだ手」はもう何もできないのか。「ミュール」の存在などまったく予見できなかったみたいだし、この巻の結末も、一人の聡明で勇敢な女性が自身の力だけで対抗したようなもので。

「個々人の行動」を読めるわけではない心理歴史学には、ただ一人生まれた「ミュータント」や、そのミュータントと個人的に関わりを持つ人間の行動など、読めるはずもない……けど、心理学が君臨する〈第二ファウンデーション〉は、もちろんこの事態を予測していたのか!?


3巻目、借りてきます。

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