(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。)




観てきましたぁぁぁぁぁぁ、紅さん&綺咲さんのサヨナラ公演!
8月2日金曜日の13時公演。
チケット取れて本当に良かった。観られて良かった。

とはいえすでに観劇から1週間以上経ってしまってすでに記憶が…。昔みたいに同じ公演を何度も観るわけじゃないので、細かいところがそもそも覚えられない(^^;) 色々間違った記述もしてしまうと思いますがどうぞご容赦を。

まずはミュージカル・フルコース『GOD OF STARS~食聖~』
なかなかすごいポスタービジュアルですよね。宝塚で「食」がテーマなの?って感じで、プログラムのあらすじを読んでもピンと来ない上に、あらすじには書いてない(もちろん場面紹介には孫悟空等々の名が出てるけど)「西遊記」の世界からスタート

少女時代のヒロインがシンデレラだかなんだかより西遊記の方が好き、西遊記を読んで!と母親にせがむところから始まるのです。
それも「孫悟空ではなく、孫悟空のライバルの紅孩児が好き、大きくなったら紅孩児のお嫁さんになるの!」と。

孫悟空のライバル紅孩児……誰?

Wikiを見ると、日本では割愛されたり原作の設定が無視されていることが多く、「日本での知名度は低い」と書かれちゃってます。
父は牛魔王、母は鉄扇公主ということで、その二人なら知ってるのに、と思うんですが。

ともあれ「魔界の皇子」を名乗る紅孩児、もちろん扮するは紅さん。
やんちゃで暴れん坊の紅孩児、日光&月光菩薩に改心を迫られ、天界の軍勢に取り囲まれ、それでもへいちゃらで最強っぷりを発揮していたんですが、調子に乗りすぎて補陀落山から落っこちてしまう。

あー、もしかして。
地上に落ちた紅孩児の話なのか。

と思ったところで「私の記憶が確かなら……!」と、「料理の鉄人」ならぬ「料理の聖人」コンテスト。いいのかこんなにわかりやすくパクって(笑)。
日本ではなくシンガポールで行われているコンテスト、出演者がまた、道場十三郎とか出て来るんですけどほんと大丈夫ですか!?

世界各国から集まった凄腕料理人達、しかし優勝候補は「炎を操る食の皇帝」ホン・シンシン。はい、これが主人公、紅さんです。
ホンだもんね。
「紅孩児」からして「よくそんなうまいこと“紅”のつくキャラクターが」と思ってしまうけど、こういうとこオリジナル作品ならではよね~。

コンテストのスポンサーでもあるっぽい上海の料理チェーン“大金星”グループの有名料理人ホンはなかなかの“俺様”キャラクターで、サングラス姿など実にチンピラっぽくて紅さんの魅力爆発!(って宝塚のトップ男役にかける褒め言葉ではない気がするがしかし褒めてる)

そこへ乗り込んでくるのがヒロイン・アイリーン。綺咲さん。彼女はホーカーズと呼ばれる屋台街でレストランを経営しているのだけど、ホンを含む大金星グループがその屋台街を再開発しようともくろんでいて、直談判に来るわけ。

シンデレラより西遊記が好きだった少女だけあって、スリッパカンフーの達人(?)。おてんばっぷりが楽しい。

その後なんだかんだでホンはアイリーンの店で働くことになるんですが、実はまったく料理のできないアイリーン(お店の料理はおじいちゃん任せ)、「できない」どころかその料理の腕はもう殺人的。

一口食べればあなたもあの世に……。

ホンが「ANOTHER WORLD」に行きかけるシーンも、その前の、お腹を空かせたホンが出された料理を「ただ」だと思って食べて「誰がただって言ったのよ」とアイリーンと口論になるシーンも楽しい。

うん、全体にHappyで楽しい舞台なんですよね。最初の方は少しテンポが悪いかな?と思ったりもしたけど、次第に引き込まれていく。

生き別れのアイリーンの父と母。そして過去の記憶がないホン。やっぱり地上に落ちた紅孩児よね…。

祭りの夜、ベンチに座って二人が話をするシーンはちょっと『霧深きエルベのほとり』を連想させます。おてんばだけどまっすぐで、気の強い娘に見えて行方不明の父や母を恋い慕う、心の裡には寂しさも抱えているアイリーン。
“俺様”だけどやっぱり根はまっすぐで、アイリーンのためにホーカーズを守らなきゃ、と思うホン。

このお芝居、小柳先生の作品ですけど、『オーム・シャンティ・オーム』『Thunderbolt Fantasy』も小柳先生ですよね。
プログラムに紅さんが“私のことを良く分かって下さっている演出の小柳先生は、この物語の中に私が演じてきた様々な作品を織り込んでくださいました”って書いてらして、さっきの『エルベ』っぽいシーンだとか、そもそも天界から地上へ、という設定が輪廻転生物だった『オーム』や、「あの世」で冒険した末にまたこの世へ戻ってくる『ANOTHER WORLD』を彷彿。

一緒に観た母も「あの落語のやつ(『ANOTHER WORLD』)と一緒やーん」と言ってた。いや、“一緒”ではない(笑)。

『西遊記』シーンのアジアンな立ち回りは『サンファン』っぽいし、紅さんを下級生の頃から追いかけているファンの方ならもっともっと「このシーンは…!」ってところを見つけられるんだろうなぁ。

孫悟空役は礼さんがやってたんだけど、これまた『サンファン』の捲殘雲ぽかった。
地上では礼さんはホンの代わりに大金星グループを背負って立つ料理人になるリー・ロンロン。

もともとは地味ぃで気の弱そうなメガネ男子。
「今日から君が我がグループの~!」と煽られても「えええ、僕がですかぁ」という感じなんだけど、憧れの女優(じゃなくて歌手だっけ?)クリスティーナが現れるとシャキっと変身、「リー・ドラゴンですっ!」と名乗りも変わって決めポーズ。

コミカルな二枚目半の役を礼さん好演。メガネ姿可愛かった。

リーとホンは再び「料理の聖人」コンテストで戦うことになり、ホンが勝ったら屋台街の再開発は中止、リーが勝ったらもう文句言わない、みたいな約束を。
勝負する献立は「満漢全席」。しかしホンの料理は実はまったくの自己流らしく、「満漢全席?何ソレ美味しいの?」状態。

リーが首席で卒業したという中華料理学院とかいうところにホンも行ってみるのですが、なぜかそこは「少林寺」。お坊さんがカンフーの練習をしている……!?
よく見ると「少林寺」ではなく「小林寺」。おい(笑)。

まぁ宝塚は小林一三翁によるお寺=修行の場と言っても過言ではない……か???

小林寺の料理主任は実は行方不明のアイリーンの父親、ホンと二人、満漢全席の食材を探しに行くのですがこれが色々大変で遭難しかけたりもして、そこで「ベンチのシーン」でアイリーンに渡された「手作りクッキー」が命綱になる、というのが心憎い。

でもあの夜から一体どれくらい日が経ってるのか。いくら日持ちのするクッキーとはいえ手作りのやつはヤバくない? そもそも殺人的料理音痴のアイリーンが作ったクッキー、食べて大丈夫なの?

「まず~い!」という感じの表情(セリフはなし)だったけど、後から「焦げたクッキー」みたいな言及があったので「にが~い」だったのかな。
ホンに食べてもらおうと手に傷を作りながら作ったクッキー、ともかくも遭難しかけのホンと父の命を救ったのだ!

で、コンテスト当日。
なかなか姿を見せないホン。
やきもきしつつも間をもたせるアイリーンたち。
この場面の衣裳がポスタービジュアルのもので、派手で綺麗でアイリーンは可愛いし礼さんは格好良く、満を持して登場する紅さんは「これぞトップ男役!」という華やかさ。

料理対決の結果は――もちろんホンの勝ち!
なんだけれども、優勝者としてメダルならぬ「星」を授与されたホン、「こんなもの要らない、星なんか要らない」と言ってリーにあげちゃうの。
「星なんかおまえにくれてやる!」と。

おおお、ほんとこういうとこ、座付き作者によるオリジナル公演ならではよねぇ。宝塚を去って行くトップスターが、次のスターへと「星」を――星組を渡す。

コンテストの勝ち負けより大事なものを見つけたから。
天界にいる時からやんちゃ放題だった紅孩児が、アイリーンと出逢ったことで「炎は焼きつくすだけじゃなく、心をあたためるものでもある」(正確なセリフ忘れた、全然違うかもしれない)ことを知り、改心した。

実はその場には「行方不明の紅孩児」を探しに牛魔王たちも来ていて、でもってホンの方も遭難中に崖から落ちそうになったかほんとに落ちたかした時に天界での記憶を取り戻していて、自分が「地上の人間じゃない」ことをもう知ってる。

せっかくアイリーンとハッピーエンドになるかと思われたのに地上と天界、二人は離ればなれになってしまうの……?

いえいえ、観世音菩薩様はすべてお見通し。心を入れ替えたホンに「善財童子となって人々に食を通して幸せを与えなさい」とかなんとかおっしゃって、そのまま地上にいられることに。

牛魔王たちも普通に地上で動き回って、他の人の目にも見えてるみたいだったけど、天界と地上界ってそんなに普通に交流できちゃうもんなのか。魔界の皇子、あっさり人間として暮らせちゃうの? あの観音様のお達しの瞬間、普通の人間へと転生(って言うのか?)させられたのかしら。

「数年後」とかいうラストシーン、アイリーンとの間にいっぱい子どもいたもんね。人間になってるよね。
赤ん坊のお人形を背負ってるから「おお、めでたく赤ちゃんが」と思ったらその後「パパ~ママ~」と5~6人子どもが出てきて、一体アイリーン何人産んでるの!?って感じだったけど、トップ男役とトップ娘役がこんなにも子だくさんなのって初めて見た気が。

勝負に敗れたリーはまたぞろ「冴えないメガネ男子」に戻るけど、クリスティーナから「私、最初からメガネ好きなのよ」とか言ってもらって、こちらもハッピー。クリスティーナ役は次期娘役トップの舞空さん。役のせいもあってか大人っぽく見えた。くちゃっとしたお顔だなぁ、と…。

色々とツッコミどころ多いし、他愛ないといえば他愛ないお話だけど、こういうハッピーなサヨナラ公演いいなぁ、と思いました。
冒頭で「大きくなったら紅孩児のお嫁さんになる」と言ってた夢が叶ったアイリーン。物語の中の憧れのヒーローと本当に結婚できるなんて、羨ましいにも程がある。
「善財童子」のくだりももともとの紅孩児の設定にあるらしいし、よくできてる。

紅さんも綺咲さんもとても生き生きとして、ほんとに「よく分かってる小柳先生」ならではの作品でした。

そしてスペース・レビュー・ファンタジアと銘打たれたショー『Éclair Brilliant』。これがまた、良かった!

プロローグから「ゴージャス星組」、客席降りもあってわくわくさせてくれる。中詰め7場~10場のラテンナンバーは熱く、紅さんの「エル・クンバンチェロ」いいし、天寿さんの歌で紅さん、綺咲さん、礼さんの3人が踊る場面も素敵(曲は「ブエノスアイレスのマリア」だった気がするが違うかもしれない)。

そして11場の「スペイン」。
ここが!最高!!!
ラヴェルのボレロを踊るのですが、リズムだけで始まる曲のアレンジもいいし、舞台に横に配置した階段を使っての振りの構成も素晴らしく、後々まで「ショーの名場面」として語り継がれるのでは、と思える見事なボレロでした。

いやー、ほんとここだけでもお金払う値打ちあるわ。
振り付けはみつえちゃん(若央りさ)。我が青春の宝塚時代のスターさんがこうして活躍なさっているのほんと嬉しい。

フィナーレの男役黒燕尾も津軽三味線でねぇ。
上妻宏光さんの「風林火山」。

邦楽と洋楽のコラボ大好き人間にはたまらない選曲。それでなくても格好いい男役黒燕尾大階段が一層素敵に。

続く紅さんと綺咲さんのデュエットもラブラブで良かったし、なんか終盤はうるうるしてしまいました。ああ、最後なんだなぁ、って。
もう宝塚の舞台で紅さんを観ることはないんだと思うと……。

うっかり『サンファン』のBlu-rayをポチりそうになるわ(すでに3回ぐらいポチりかけたが踏みとどまっている)。

(AmazonPrime、こんなのも配信してるのね、知らなかった)

ショーの作・演出は酒井澄夫先生だったんだけど、酒井先生ってそれこそ「我が青春の宝塚」時代から活躍なさっていて、大好きだったシメさん(紫苑ゆう)のトップ披露公演だった『ワンナイトミラージュ』とか、これまた大好きだった星組『恋の花歌舞伎』とかを手がけてらっしゃるのよね。

『ワンナイトミラージュ』も鏡のシーンが素晴らしかったんだよなぁ。ジュンベさん(洲悠花)の歌でスパニッシュ……。なるほど酒井先生だ……。

プログラムには「Memories」と題した特別ポートレートが入ってて、スカーレット・ピンパーネルぽい白いひらひらお衣装のトップコンビを堪能できます。
私、こういう「いかにも宝塚」っぽい役の紅さんを観ないままだったので、「黙って立ってればこんなに宝塚宝塚した麗しいお方なのに!」と思ってしまいました。

本当に綺麗。

こんなに美しく格好良いのに面白くて楽しくてサンファンでは超胡散臭いし(褒めてる)、エルベではがさつな中にも情愛溢れた船乗り、『ANOTHER WORLD』は完全コメディなぼんぼん、そして子だくさんな元魔界の皇子。

宝塚のスターさんはみんなそれぞれ個性があって唯一無二の輝きを放っていらっしゃるけど、紅さんみたいな人は本当にこれまでもこれからももういないのでは。いや、その、観劇回数少ない私が言うのはおこがましいけれども……。

サヨナラ公演、観られてほんとに良かったです。


(紅さんのスカ・ピン、Primeで配信あるうちに観ておかないとだけど、864円ってなかなかのお値段、うう)