(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください)
もともとは5月の何日かに見に行く予定だった月組公演。コロナにより一旦公演が中止になり、5か月遅れぐらいの観劇となりました。
5月のチケットは某カード会社の貸切公演だったんですが、そういえばまだ払い戻しされてない(^^;) 忘れた頃に戻ってくるのかしらん。(※10月15日に払い戻し通知が来ました)

改めてチケットを取り直し、10月8日の11時公演を観劇しました。安定のB席
花組公演の際は前後左右1席ずつ空けた千鳥格子状態でしたが、今回は普通に密で販売されています。
が、平日ということもあり、前のA席何列かはお客さんがいなくて、両隣も空いていて、歌劇団の収入的にはありがたくないのでしょうが、観劇する方としては大変見やすかったです。前に人がいないと、本当に舞台が見やすい。2階なので全体が見渡せますしね~。

月組さんを観るのは本当に久しぶり。
ええっと、『PUCK』以来かな。龍真咲さん時代はちょこちょこ観てたけど、珠城りょうさんになってからは初めて。つまり2014年の10月以来、6年ぶり!
全然生徒さんがわからない! 組長さんさえ知らない人!!!

なのに5月に観に行くつもりだったのは日本物レビューだったからで、植田先生の日本物レビューにはトラウマがあったものの、坂東玉三郎氏が監修しているというし、初舞台生のお披露目もあるし……だったんですけど。

うーん、やっぱり『WELCOME TO TAKARAZUKA~雪と月と花と~』はビミョーでした。なんだろう、植田先生とは趣味が合わないと感じる。(ちなみにトラウマなのは2014年月組の『宝塚をどり』の貞子

チョンパの幕開きには「わぁっ!」と歓声が出たし、続く初舞台生の口上も胸熱、長く宝塚の日本物を支えてきてくださった松本悠里お姉様の最後の舞台を拝見できたのもとても良かったのですが、なんか、プロローグとフィナーレ以外の部分が暗くて(物理的に黒背景だったり照明が暗かったり)、わーっと華やかに若衆姿で歌い踊ってほしい私には沈鬱すぎた。

「雪」「月」「花」がモチーフで、「月」の場面は月だからそりゃ「夜」で、舞台が暗いのは仕方ない、演者が黒の着物を着ているのも仕方ない。あの場面、群舞だし、どちらかというと好きなパターンのはずなのに、なんかこう、ワクワクできなかった。
うーん、選曲なのかなぁ。

最初の「雪」の場面ではヴィヴァルディの「四季」から「冬」、「月」の場面はベートーヴェンの「月光」、そして「花」の場面にはチャイコフスキー「くるみ割人形」から「花のワルツ」が使われています。「洋楽で日舞を踊る」は宝塚日本物の醍醐味なので、そこはいいんだけど、もう少し和楽器を取り入れるとか、テンポアップする部分を作るとかこう……。

まぁあくまで個人の感想なので、私の好みではなかった、という話です。

超有名なクラシックが使われているのは、最初の企画意図が「オリンピックにやって来る海外からのお客様向け」だったからだそうで、「WELCOME」というタイトルもそういうことらしい。
そうかぁ、ちょうど東京公演が今年の夏の予定で、オリンピック期間中に上演されるはずだったんだねぇ。

それならよけいに和楽器絡めて「ザ・日本」にした方が喜んでもらえるのではと思わなくもない。

「花」の場面は月城かなとさん扮する若衆が鏡の自分と踊る……みたいな感じで、照明も明るめ、何より若衆姿が素敵で、3場面の中では一番好みでした。

フィナーレの途中で悠里お姉様が登場するとこ、白鷺だか白鶴だか、翼をあしらったお着物が見事でした。もちろんお姉様の舞もお美しく。
今後日本物レビューの「芯」はどうなるんでしょうね。トドちゃん(轟悠)が務めるのかしら。

5か月待たされた初舞台生の口上、日本物での「隅から隅までずずずいーっと、請い願いたてまつりますぅぅぅぅぅ!」はやっぱりいいですねぇ。口上指導は立ともみさんだそうで、立さんのあの素晴らしい口跡を思い出します。光月組長の口跡も見事でした。
初舞台生たちはいつもの「清く正しく美しく♪」の団歌ではなく、「WELCOME TO TAKARAZUKA」の主題歌を歌っていました。

またこの主題歌がビミョーな感じだったのですが、いつまでも「花夢幻」や「花幻抄」に囚われていてもしょうがないのでしょう。最近(ってもう10年以上前)だと谷先生の『さくら~妖しいまでに美しいおまえ』はとても良かったけど、あれ以来植田先生以外の日本物レビューってもしかして上演されていないのでは……。

つい『花幻抄』のDVD引っ張り出して見ちゃいましたけど、やっぱりとても素敵で、これこのまま上演した方が海外のお客様にも喜んでもらえるのでは、と思ってしまいました。梅に鶯、和太鼓での夏祭り、春夏秋冬、花をモチーフに、プロローグは公達姿でチョンパ、フィナーレは若衆姿。
衣裳もとても豪華に見える。

今回、コロナ対策で出演者を絞っていることもあり、色々制約もあるんだろうと思いますが、悠里お姉様のお着物以外はそんなにゴージャス感がなかったような。

あ、そうそう、プロローグの歌手2人、きよら羽龍さんと静音ほたるさん、とてもお上手で印象に残りました。

で。

そんな第一部のモヤモヤを吹き飛ばすかのように。
第二部、ミュージカル『ピガール狂騒曲』は大変楽しかったです!!!!!

シェークスピアの『十二夜』がモチーフになっていて、トップ男役珠城さんは女の子の役なんですよね。プログラムのあらすじページでしっかりネタバレされてるんだけど、読まずに見たので「あ、そうか、十二夜か!」ってびっくりしました。
男装の女の子、娘役さんがやるのかな~ぐらいに思ってたから。

ジャックという男性として登場する珠城さん、ことさらに「マダァム」と発音したりして、ちょっと過剰な感じなんですけど、それは「女の子が一生懸命男の振りをしているから」というのが割とすぐ明かされる。本当は「ジャンヌ」という女の子なんだけど、借金取りに追われて、身を隠すために男のなりをしてる。

珠城さんはジャンヌの異母兄ヴィクトールとしても出てきて、こっちはベルギーの貴族、女好きのプレイボーイ、見るからに男前な格好いい男子で、その演じ分けが見事でした。

うん、ジャックの時の珠城さんはちゃんと可愛いのよね。無理してるとこ、うっかり女の子の発想で喋っちゃうとこ。
観客は早い段階で彼女の正体を知ってしまうから、「うっかりバレそう」なシーンがいちいち楽しいんですよ。ジャック(ジャンヌ)を応援しつつ、いつバレるんだろうとクスクスどきどき。

舞台はパリ。
男のふりをしたジャックは子どもの頃からの憧れの場所「ムーラン・ルージュ」に職探しに行きます。舞台に立つ以外は何でもするから雇ってほしいと。
「ムーラン・ルージュ」の支配人シャルルは、ちょうど作家ウィリーの妻ガブリエルを新作のヒロインに抜擢しようとしていて、彼女を口説き落とせたら雇ってやる、とジャックに言うのですね。

ガブリエルはその辺の男とはひと味違う(そりゃ女だもん!)ジャックに一目惚れ、「彼が相手役なら」と条件付きで出演を承諾。女だとバレては困るジャックは「舞台では仮面をつける」「触っていいのは手だけ!」ということで渋々相手役を務めることに。

ガブリエルと別れたくない作家ウィリー、ジャンヌの行方を追うヤクザ者マルセル一味、ベルギーから異母妹を探しに来たヴィクトール達の思惑も絡み、さて「ムーラン・ルージュ」の新作レビューはどうなる……?

テンポも構成も良く、キャスティングもみんな巧く嵌まって、最後まで退屈することなく楽しめました。『WELCOME TO TAKARAZUKA』の方が45分しかなくて、こちらは1時間45分と通常のお芝居よりも長かったんですが、まったく長さを感じさせない。

まぁ、フィナーレ部分を除くとちょうどいつもの1時間35分だったのかな?という気もしますが、とにかくずっと楽しく、面白くて、観に来て良かった!と思いました。

「今日来てくれたお客さんが明日も来てくれるとは限らない」とか、「夢の場所(だけど内情は火の車)」「彼女たちがいるから幕を上げられる」といった、宝塚そのものに通じる台詞がちりばめられ、コロナ禍のこの状況で舞台を創り上げる厳しさ、喜びとリンクして、すごく“今”にふさわしい作品になってました。

全体としてはコメディーなんだけど、それだけじゃない、“今”だからこそより一層胸に響く、ハートフルな作品だったなぁ。

珠城さんの好演はもちろん、シャルル役の月城かなとさんもとても格好良く。シルクハットとロングコートの似合う“大人の男”、素敵でした。ジャンヌが心惹かれるのもしょうがない。

ガブリエルの美園さくらさんもちょっと我がままな感じの人妻ヒロインを熱演。もともと夫ウィリーのゴーストライターをしていて、「もう無理!自分の名前で作品を発表したい!」と夫のもとを去る女性で、「我がまま」というのとは違うかもしれないけど、ジャック(ジャンヌ)に一目惚れしてグイグイ押していく、周囲を振り回す感じがあって、宝塚のヒロインとしては割と珍しいタイプではないかしらん。人妻だし。

珍しいと言えば、オスカル様みたいな「男装の麗人」ではなく、「一時的に男のふりしてます」ってだけの女の子をトップ男役がやるのもすごく珍しいよね? そんでトップと2番手男役がハッピーエンドになるっていうの。
「オルフェウスの窓」とか「紫子」とかあるけど、2人とも小さい頃から男装してたはず。ジャンヌみたいに「ひょんなことから」っていうんじゃない。
斬新だし、冒険だったんじゃないかと思うけど、珠城さんすごく嵌まってて良かったし、原田先生お見事

ガブリエルの夫ウィリー役の鳳月杏さんもめっちゃ巧かったし、ウィリーに雇われた弁護士ボリス役風間柚乃さんは女装させられカンカン踊らされ。ほんとに楽しい。楽しいしか言ってないけど(笑)。

ジャンヌを追うヤクザ、マルセル役輝月ゆうまさんもドスが利いて大変良い。光月組長のちょっとオネエな振付家ミシェルも良かった。
月組さんいいじゃんいいじゃんすげーじゃん♪

ムーラン・ルージュのダンサー、レオ役の暁千星さんは顔がちっちゃい! 歌も良かった。

フィナーレ、初舞台生のラインダンスは「パリ・カナイユ」。あの曲好きなので盛り上がる~♪ 劇中でもフレンチカンカンあったけど、宝塚の伝統及び見せ場である「パリ・レビュー」をうまくミュージカルに組み入れて、「海外からのお客様」に楽しんでもらう趣向だったのかな。日本の客も大いに楽しませてもらいました。

男役黒燕尾の大階段も格好良かった。曲も振付も良くて。(「オートバイの男」という曲らしい) 最初月城さんがセンターなのも「おおっ!」って思いました。

ロケットはトリコロールの衣裳なんだけど、グランドフィナーレ、トップ3人もトリコロールで、でも娘役さんじゃなく月城さんがピンクなのが新鮮でした。美園さんはブルーなんだけど、少しくすんだニュアンスのあるブルーで、きれいな色でした。珠城さんは白、羽根がトリコロール。

『ピガール狂騒曲』はほんと最初から最後までずずずいーっと楽しかったです。銀橋との間に2箇所橋を渡してあって、プログラムで原田先生が「空(から)のオケピットを見てもらうのが忍びない」から、とおっしゃってるんだけど、お芝居の最後でウィリーが「せっかくだからこの橋渡っていこう!」とか言ってて、アドリブなのか台本なのか。

「また着替えてきたー!」も楽しかったなぁ。ジャック(ジャンヌ)とヴィクトール、2人が別人だと知らない人々の大混乱。同時に舞台に立てないから、最後はヴィクトールの方が代役さんなんだけど、プログラムには誰が務めてるのか書いてない。

ヴィクトールとガブリエル、シャルルとジャンヌ、2組ともにハッピーエンド。ガブリエルは「男らしくない」ジャックに惚れたはずなのに、顔が同じなだけのヴィクトールでいいんだろうか。シャルルは男だと思ってたジャックでいいのか? 実は女でしたって言われても心の準備……。

ともあれ『ピガール狂騒曲』、ほんとに良かったです!
月組さん、原田先生、素敵な舞台をありがとう~~~♡