(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い多々あると思いますがご容赦を)




3月31日公開の映画『刀剣乱舞』2作目「黎明」、早速4月3日に観てまいりました。
1作目の「継承」がめちゃめちゃ好みだったので大いに楽しみにしていたんですが……うーん、ちょっと楽しみにしすぎたかもしれない。まったく毛色の違う作品でした。これはこれで楽しめたけど。

『仮面ライダーゼロワン』の“亡”こと中山咲月さんが予想以上の活躍(というかほぼ主役)だったし、ジュウオウジャーのセラちゃんこと柳美稀さんのギャル審神者が非常にキュート。
お二人の他にも竹財輝之助さん、山本涼介さん、津田寛治さんなどニチアサでお馴染みの皆さん、1作目に引き続き堀内正美さん、そしてそして、チラッとしか出てないけど城乃内!――松田凌さん

出番の多いマコト兄ちゃんはクレジット見るまで気づけなかったのに、一瞬だけの城乃内には「城乃内!!!」となってしまった。なんでそんなに城乃内推しなんだ、俺。

物語の発端は、平安時代。西暦995年。時の権力者藤原道長と安倍晴明が「大江山の鬼退治」について議論している。
「鬼は退治しなければならん」「それが政治というもの」
実際には「鬼」ではなく、ただひっそりと大江山に籠もって暮らしている人間たち。ただの人間だとわかった上で、“鬼退治”という大義名分で始末しようという悪だくみ。
「もってこいの者がおります」と、かの有名な源頼光と四天王が鬼退治に遣わされる。

道長は柄本明さん、そして安倍晴明は竹財さん。この1シーンだけの出番に豪華なキャスティングだ~~~。てか安倍晴明、政権寄りの立場なんだ。わかっていて、道長に「OK」を出すんだ……。

頼光は津田寛治さん
鬼退治に向かう一行の前に現れる時間遡行軍。颯爽と現れる三日月宗近たち刀剣男子の面々。「ここは我らに任せてあなた方はやるべきことを」と言われ、頼光たちは先へ進む。そして、逃げた時間遡行軍の一体を追って“鬼”たちの村に入っていった山姥切国広は、「鬼退治」がただの「殺戮」でしかないことを目の当たりにする。

女子どもも容赦なく、無抵抗な者たちを殺してまわる頼光たち。

“鬼”の首魁、酒呑童子も僧侶に化けた頼光四天王に毒を盛られ、瀕死の状態。彼は山姥切を見ると「おまえが奴の言っていた刀剣男子か」と言い、「“歴史を守る”だと? これが守られるべき歴史なら、俺は歴史を呪ってやる、この日の本を呪ってやる、千年の後までも!」と自ら首を斬って果てます。

その際、山姥切が道連れになって存在が消えてしまうのですが……。ここ、ちょっとよくわからなかった。酒呑童子が首を斬るのに山姥切を使ったの?と思ったけど、たぶんそういうことではなくて、酒呑童子の呪いが――強い想いが――近くにいた山姥切を巻き添えにした、ということだったのでしょう、たぶん。

この酒呑童子役が“亡”――中山咲月さん。衣裳やメイクのせいもあってか“亡”の時よりいかつく見え、恨みのこもった非常に気迫あるお芝居が良かったです。

「大江山の鬼退治」という歴史は守られたものの、山姥切を失ってしまった三日月。時代はいきなり2012年に飛びます。
「刀剣乱舞」というゲームが誕生したのが2012年なのかな?と思いましたが、ゲームは2015年スタートらしく、まだ「刀剣男子」も「審神者(さにわ)」も存在しない時代。ただ、「分岐点」となる時代と呼ばれていて、ここで「審神者」の芽が摘まれなかったからこそ、後に「刀剣男士」が生まれる、というお話になっています。

そう、これ、1作目と違って「審神者(のたまご)」の方にスポットを当てた話なんですよね。
2012年、「ものの声を聞くことのできる」女子高生琴音が三日月に出逢い、それまで嫌っていた自分の能力を認め、成長していく物語。
だから主役は彼女で、刀剣男士たちではなく、1作目に比べるとアクションシーンも少ない感じで、私にはちょっと物足りなかった。

三日月が琴音ちゃんにくっついてカフェにいたり、学校の教室にいたりする絵面はシュールで面白かったけど、やっぱりお城や神社仏閣的なところで剣を振るってる方が美しいし、琴音ちゃんにはあまり感情移入ができなくて。
むしろ「前世でどんな徳を積めばうっかり三日月を拾ったりできるんですか?羨ましい!!」ってなっちゃった(^^;)

2012年の日本では、琴音ちゃんの友達をはじめ多くの人が「想い」を抜き取られ、「意識喪失」する事件が発生。
「ものの声が聞ける」琴音ちゃんは、人々の「想い」の流れを光の筋のようなものとして見ることができ、その筋をたどっていくとそこには酒呑童子と同じ顔をした青年イブキが。

イブキは弟タケルのために人々の「想い」を集めていたのです。心が壊れてしまったらしい弟を元に戻すためには、多くの「想い」が要る。そしてイブキの傍らには山姥切の姿があったのだけど、どうも山姥切も「想い」を抜き取られ、記憶をなくしているらしい。三日月を見ても反応しないけど、でも「俺はあるじに従う、今のあるじはイブキだ」みたいに言ってて、自分が「刀剣男士」で「あるじの命に従うもの」ということは覚えているっぽい。

最終的には山姥切、元に戻る(記憶を取り戻す)んだけど、記憶があるままで「歴史を守るために人の命が踏みにじられるなら、俺は歴史から消えるものの方を守る」方が良かったなぁ。「刀剣男士」の性質上、どれほど理不尽に思えても「歴史は歴史」で、「大江山の鬼たち」を救えばその代わりに死んだり、生まれなかったりするものが大勢出てしまう。そこの議論はすでに「継承」でなされてはいたんだけど。

単に記憶をなくしてあるじに――イブキに従ってるだけだと、あんまりドラマが生まれないじゃん? まぁ今回は刀剣男士側にドラマはあまりない、そういう作りなんだろうけども。

「意識喪失」事件の解決のため、時の政府自身が刀剣男士に仕事を依頼していて、内閣官房国家安全保障局に山姥切長義が顕現。三日月はじめ、他の本丸から遣わされた刀剣男士たちのリーダーとして、なかなか高飛車に振る舞います。

刀剣男士に助力を仰ぐ時の政府って何???と思うんですけど。
最後、一件落着した時に、「時の政府がすべての痕跡と人々の記憶を消す」とも言ってて、「時の政府、なにもの!?なんでそんなことできるの!?」と。
少なくとも2012年時点の日本国政府にそんなことできないと思うんだけど、未来からやってきた超能力者とかがいるんだろうか、「時の政府」。
(もしかして長義が言ってたのは2205年時点の「時の政府」? でも2012年の内閣官房があっさり協力してるわけだしな)

山姥切長議は梅津瑞樹さん。『漆黒天』の蔵近役でもあの独特の、「神経質そうな美貌」が活かされてましたが、今回もピリピリとして高飛車な、少しヒステリックな感じがよく似合ってました。山姥切国広のことを「たかがコピー」と蔑んで、彼を気遣う三日月のことも「ふんっ」って感じにあしらって、悠然と落ち着いている三日月との対照が良かったなぁ。

長義との区別のために三日月が「これは失礼、“うちの”山姥切が」と「うちの」を強調するのも良かった。愛よねぇ~~~。

三日月が所属する本丸とは別の本丸からも東京に――内閣官房に集う刀剣男士たち。福岡からはへし切長谷部。京都からは髭切と膝丸
この時代で刀剣男士たちが力を発揮するには「仮のあるじ」が必要ということで、三日月には琴音ちゃん、長義にはなんとかいう国家公務員くんが付いています(名前覚えてなくてごめん)。公務員くん、他の内閣官房のメンバーからは「なんであんな仕事できないやつが」「このためだけに内閣官房にいるんだろ」みたいな言われ方をしていてお気の毒。琴音ちゃんと同じように、「ものの力を励起させることのできる能力」ゆえに、時の政府に雇われてるようでした。

琴音ちゃん他集まった人たちにお茶を出すぐらいで大変地味な扱いだった公務員くん、最後には長義に「覚えていてはやれないが、世話になった」と労われていて良かった。山姥切国広や三日月には冷たいけど、悪いやつじゃないのね、長義。

髭切、膝丸の「仮のあるじ」となるのは京都の神職、演ずるは堀内正美さん。きゃー、堀内さぁーん! 1作目「継承」では声だけでお顔は映りませんでしたが、今回はしっかりばっちりご出演。神職姿がよくお似合いだし、「継承」の審神者姿を覚えてる身にはとても心憎いキャスティング。もしかしたらこの堀内さんの子孫があの「継承」での審神者に…?と思えて楽しい。

膝丸役は『仮面ライダーゴースト』のマコト兄ちゃんこと山本涼介さん。クレジット見るまでマコト兄ちゃんだと気づけなくてごめんなさい。髭切ともども「めちゃくちゃ背が高い刀剣男子だなぁ」とは思ってたんですが。

東京へ向かうため空港にいたらそこを時間遡行軍に襲われ戦闘になるんですが、あれって関空? 伊丹???
Twitterで「なぜ飛行機を選んだのか」というツッコミを見かけましたが、確かに京都なら新幹線で行く方が便利で速い。空港襲われて、結局新幹線で行ったのかしら。

福岡からのへし切長谷部とその「仮のあるじ」ミツルちゃんは長距離バスで東京へ移動。へし切長谷部、「継承」の時と同じく和田雅成さんが演じてらっしゃるのですが、別の本丸のへし切らしく、三日月から「ちょっと違うなぁ」などと言われていました。私には違いがわからなかった(^^;)

で。
へし切の「仮のあるじ」役を『ジュウオウジャー』のセラちゃんこと柳美稀さんがやってるわけですが。
これがすごくいい!!!
出で立ちも言動もいかにも「ギャル」なんだけど、でも実はしっかりしててへし切のことちゃんと信頼してるみたいなキャラクターがとても良く、セラちゃんのお芝居が見事。「へっしー」「へっしー言うな!」というやりとりも楽しい。
「ちゃんとご飯食べないとダメだよ」とお弁当渡すところとか、琴音ちゃんのことを「ねっしー」と呼んじゃうところとか、ミツルちゃんのシーンは全部好き。
最後、ミツルちゃんがフルネーム「黒田実弦」と名乗って、へっしーが「黒田…!」となるところも良かった。ミツルちゃん、かつての藩主の子孫なのかしら。かつてへっしーが仕えたあるじの……。

セラちゃんは男勝りのクールビューティな感じだったけど、ミツルちゃんは肉感的な感じでイメージ全然違うのも面白かったなぁ。柳さん素敵。

この2人の乗った高速バスも途中で時間遡行軍に襲われ大変なことになるんだけど、あの後あの状況で、どうやって東京に向かったんだろう。ちゃんとたどり着いてたけど。

そうしてへし切や髭切たちが無事内閣官房に集まった後だったかな? 琴音ちゃんがもう一度「光の筋」を追ってイブキの場所を見つけ、そこで実は弟の「タケル」が人間じゃないことがわかる。
琴音ちゃんには人間に見えてたけど、三日月たちには最初から「異形のもの」に見えていたようで、「こんな子どもを!」と庇おうとする琴音に対して、「おまえは何を言ってるんだ?」と。

タケルはすでに交通事故で死んでいて、イブキはその事実を受け入れられずに「人々の想い」を奪って異形の傀儡を「タケル」にしていた。「タケル」だと思って可愛がっていた。
2人は親から虐待を受けていたようで、イブキは幼い弟を守るためだけに歯を食いしばって生きていたらしい。タケルが事故に遭ったことも「俺のせいだ」と嘆き悲しんでいたところに酒呑童子の「呪い」の形代である「鬼の角」が現れ、「想い」を奪う力を得て、「タケル」の身代わりを生み出していた。

人々の「想いの力」が消えれば、当然「付喪神」を励起する力も消える。はるか未来の時空に存在する本丸も、審神者も、刀剣男子たちも、みんな消えてしまう。
それこそが時間遡行軍の狙いだったのだ。

平安時代で取り逃がした時間遡行軍の1体がイブキに付き従っていたんだけど、「所詮おまえも俺を利用しただけだろ」とイブキに取りこまれ、イブキ=酒呑童子は強力な“鬼”になる。
倒すべき“鬼”だけど、その中には「ただの人間」のイブキがいる、だから琴音ちゃんは彼の心に呼びかける。「タケル君はこんなこと望んでないよ」「自分の中の声を聞いて」と。

この辺の展開、「よくあるパターン」だし、すっかり主役が琴音ちゃんで、三日月や山姥切じゃないのがこう、もやもやしちゃったな。
酒呑童子と青年イブキ、中山咲月さんの1人二役の熱演はとても良かったけど、彼の心を救うのは山姥切の役目じゃないの?なんで琴音ちゃんなの?みたいな。

だってあれじゃあ山姥切国広の見せ場が……。

“鬼”が一瞬イブキの顔を取り戻して、「俺の首を斬れ、俺を信じろ!」と山姥切に言って、それに応えて刀を振るうの格好いいけど、でもそこぐらいしか見せ場がない。
イブキと山姥切の間の絆みたいなものもさほど描かれてないので、「俺を信じろ」と言われましても、と思ってしまった。
山姥切によって酒呑童子の“角”が斬られ、それによって“鬼”は消滅、イブキは無事、山姥切他、想いを奪われていたものたちの意識も戻る。

うーん。

あ、そうそう、消滅したかに見えた“鬼”、戦隊の敵怪人みたいになんかデカくなって宙に浮いてたんだった。それを三日月が「では、舞うとしようか」で一刀両断。美しい。が、あっさりすぎて物足りない……もっと、もっと三日月の殺陣を……。

イブキたちの話とは別に、渋谷のスクランブル交差点に大挙して現れた時間遡行軍をやっつけるため、刀剣男士たち大集合。
山姥切長義、へし切長谷部、髭切&膝丸はもちろん、三日月の本丸にいた骨喰藤四郎や小烏丸、そしてこの場面だけのゲスト出演男子たち。
小烏丸の人、髪型というかかぶりものがすごくて、あれで華麗に殺陣できるのすごいなと思いました。骨喰くんは相変わらず美形。
ゲームも舞台もまったく知らないのでゲスト男子はさっぱりわかりませんでしたが、なぜか一目で「城乃内!」とわかった松田凌さん扮する刀剣男士は加州清光らしい。
「継承」に出ていたソノシこと鶯丸(廣瀬智紀さん)もチラッと。鶯丸のあの流れるような殺陣、大好きなのでもっとたくさん出てほしかった。

この街中での大乱闘シーンはそれぞれのアクションが非常に格好良く撮られてて見応えありましたが、いかんせん一人一人が短すぎて物足りない。もっと、もっとじっくりしっかり見たい~~~~~。



時間遡行軍と刀剣男子たちの戦いを目の当たりにすることになった通行人たちが、驚き怖れながらも男子たちを応援して、彼らにパワーを与える、みたいなのがこのシーンの主題ぽかった。(すでに記憶が曖昧になっています、すいません)

最後に山姥切長義が言ったんだったかな、「誰もが審神者(さにわ)になる可能性がある」って。

誰もが「審神者」として自分の本丸を作れる、それが『刀剣乱舞』というゲーム。その出現の可能性――人々の“想いの力”――を時間遡行軍に奪われることを無事阻止して、やがてゲームが誕生し、「2205年」へと続いていく。
だから「黎明」なんだなぁ、と納得はしたけど、うーん。

もっと男子たちのアクションとドラマを見たかったな……。


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