『罪と罰』は、岩波文庫版を買ってみました。
新潮文庫版なら近所の本屋にもあったのに、わざわざネットで岩波文庫版を注文してしまったのは、岩波は江川卓先生が訳していらっしゃったから。
「えがわ・すぐる」じゃありませんよ。
「えがわ・たく」です。
よく知らないけど、ロシア文学研究ではきっと有名な先生です。私が名前を聞いたことがあるぐらいだから……。
Amazonでも「岩波の江川訳の方が読みやすい」とレビューに書いてくれている方がいらしたこともあり、わざわざ取り寄せてしまいました。

しかし前に買った『悪霊』(新潮文庫版)を見てみたら、それも江川先生訳だった。
全然わからなかった。
読みやすいとは思わなかったな……それは訳文がどうこうというより内容の問題かもしれないけど……。
今読み返したら少しはわかるようになっているのかしら。

え。
さて。
久々に岩波文庫を買って、後ろにずらずらっと「訳注」があって、「うわっ、めんどくさい!」と思ってしまいました。
そういえば古典新訳文庫の『カラマーゾフ』には「訳注」というものがまったくなくて、いちいちどこか他の頁を繰ることなく、一気に読み通すことができたのですね。
巻末に押しやられている「訳注」をいちいち確かめながら読むの、すんごいめんどくさいですよねぇ。まぁ、絶対読まなきゃいけないもんでもないけれど。
「訳注」ではなく、「読書ガイド」という形で必要な情報(お金の単位とか宗教上のしきたりとか、その他注意点)を書いてくれていた『カラマーゾフ』。こういうところにも「読みやすさ」の工夫があったのだなと改めて思いました。

で。
岩波文庫といえばその独特の背表紙(というか、表紙自体そうですが)と、「ちょっと丸まっちい字体」と思っていたのですが。
活字が変わっていました。
普通になってた。
昔はこんなだったのに。↓


『オリヴァ・ツウィスト(上巻)』より
1990年第5刷のもの

『罪と罰』はこんなでした↓



この写真には写ってないけど、古い方は「こ」の上と下がつながってたり、丸まっちいというか、くねっとしてるというか……。
『罪と罰』は字もずいぶん大きいし。
39字×16行。
『オリヴァ』は43字×18行。
あ、『オリヴァ』には巻末の訳注というものがない。
あれは文庫の特徴ではなく、訳者個々人に裁量が任されているのかしら。

海外の名作では新潮文庫もとっても強いですが、新潮にはしおり紐がついている。あれ、大好きです。なぜ他の文庫にはついてないんでしょう。紙のしおりはけっこうカバンの中で落ちたり、どっか行ったりしてしまう。それになんか、「しおり紐」って、お上品な感じがしませんか(笑)。
木陰で本を読みながら知人を待っている美青年(!)が相手がやってくるのに気づいてしおり紐をすっと頁に挿してぱたんと本を閉じる。紙のしおりをはさむ動作より、紐をすっと渡す動作の方が美しいと思いません?(爆)

昔の新潮文庫はとっても字が小さいです。今見ると「うわ〜」という感じがする。
ちょっと、字の大きさはわからない写真になっちゃってますが、『戦争と平和』1巻(昭和63年32刷)はこんなの。↓


43字×19行。

去年出た『ローマ人の物語』31巻がこれ↓


38字×16行。

活字も変わってますね。
今はどこの文庫もすきっとした、同じような字体だなぁ。
どこも字が大きくなってるのは、「読みやすさ」以上に、「同じ分量でも巻数が増えて、売り上げに貢献する」からでしょうか。
新潮の『罪と罰』は上下2巻で岩波は3巻……。

本の上の部分、頁が切りそろえられてないところは今も同じ。新潮も岩波もでこぼこしてる。古典新訳文庫は底と同じく上もぴしっと切りそろえられてます。
そうそう、古典新訳文庫は少し背が高い。
だからどうってこともないんですが。

楽しい文庫比べでした。