タイトルだけは聞いたことがあった『僕僕先生』、近頃シリーズ最新作が出たということでTwitterでその感想など見かけ、「美少女仙人とニートな青年のゆる~いロードムービー(って、映画じゃないけど)」的内容だということを初めて知り。

「あー、それだったら息子ちゃんも読むかな」と思って1冊目の文庫を買ってみた。

最近本を買うときに「息子ちゃんも読みそう」というのがけっこう重要な基準になっております(^^;)

まぁロシア文学はさすがに「読んでみ」とは言わなくて、完全に私の趣味だけど、算数系のヤツとか、フレーヴィアシリーズとかは「親子で楽しめる」を基準に選んでる。

あんなに読書家だった息子ちゃんも10歳過ぎて児童書は卒業、でも大人の本は多すぎて何を読んだらいいかわからない→読むものがない→何も読まない、ということになっていて大変もったいない。なので母は、「これは?」「こんなのどう?」とせっせと彼の好みに合いそうな本を探しては勝手に買ってきて彼の本棚に入れるということをしているのです。

最近では『空想科学読本』シリーズがバカウケしました。

って、これ『僕僕先生』の記事ですよね(笑)。

うーん、それなりに楽しめたんだけど、でも「面白かった!大好き!!!」ってほどじゃないなぁ。

私、もっと血湧き肉躍る方が好きだからなぁ。

引きこもり気味のニートの青年王弁(と言っても舞台は玄宗皇帝の時代なんだけども)が見た目美少女の仙人“僕僕先生”と出逢って、淡い恋心(最後にはしっかりした恋心に育っていた)を抱きつつ仙人の不思議な世界を体感し、先生の方も王弁のことがことのほか気に入っていて、でもやっぱり仙人と普通の人間だし、年の差もすごいし(“僕僕先生”の実年齢は不明だけど、100歳200歳程度で済まないことは確か)、飄々と、師弟以上恋人未満というような。

見た目「美少女」だけど、妖精や魔法使いではなく仙人(仙女?)ということで、「可愛い可愛い」「女の子女の子」した感じじゃなく、凛々しい、ちょっと宝塚っぽい雰囲気の、少年のような少女なのよね、僕僕先生。それがなんとも魅力的ではある。

王弁が彼女にメロメロになるのはよぉくわかるんだけど、でもなんかウザいんだなぁ(笑)。

全体に飄々としたお話の中で、「恋心」はいいアクセントなんだろうけど、なんかめんどくさい。なくていい、って思っちゃう。もう恋愛がダメなのかしら、私。年?(爆)

王弁はガツガツしたところのない素直ないい青年で、クールで少年ぽい僕僕先生とはいい取り合わせ。でも私のタイプじゃない。

うーん、男性が読むと王弁にめちゃめちゃ感情移入できるのかなぁ。僕僕先生に気に入られて、彼女をおんぶしたり、彼女が甘えてきたりするとこの描写がたまんなかったりするのか。

もしも「見た目美少年仙人」と「さして取り柄もない引きこもり気味の女の子」という男女逆パターンのお話だったら面白かっただろうか。

だいぶ違う話になりそうな気はする。

「見た目美少年仙人」とコンビを組むなら女の子は気の強いちゃきちゃきした子の方が釣り合い取れる気がする。「女の子」じゃなくてそろそろ適齢期なのに「彼氏いない歴○年」な冴えないOLだったらいい感じになるかなぁ。

飄々というよりいたずらっ子的な美少年仙人に振り回されながらも地味に世話をし、「私なんて取り柄もないし」「若くもないし」といじけつつ惹かれて、でもよく考えたら「見た目が若い」だけで向こうは「5000歳」とかだから全然大丈夫じゃん、みたいな。

あー、そういう話書こうか(笑)。

“僕僕先生”も普段は少女の姿を取っているけど、老爺にでも中年男にでも姿を変えられて、年齢も性別も、実のところわからない。王弁の恋心を知りながら“僕僕先生”は「本当は白髪のじーちゃんかもしれないけどそれでもいい?」なんて言って盛り上がった王弁の気持ちを萎えさせたりする。

お話終わる頃には王弁は「それでもいい」って思えるほど強くなってるんだけどね。

強く……というか、「美少女の姿でいる“僕僕”が一番“芯”の“僕僕”だ」って感得できたからだろうと思うんだけど。

何万年生きても、肉体が老いなければ精神って若いままでいられるのかな。

もちろん経験の量とともに“子ども”ではいられない、“無邪気なまま”ではいられないだろうけど、記憶もはっきりして体も十分以上に動くのであれば、何万年経っても“精神”はたとえば20代くらいのまま“年を取らない”もんだろうか。

別にそんなの全然この作品のテーマじゃないだろうけど(少なくともこの1冊目では)、仙人にはなれない王弁と僕僕先生では、王弁だけが年を取って、いつかは死んじゃうわけだからなぁ。

それは王弁よりも僕僕先生にとってより辛いことだろうな、きっと。

「この世の中で起きる事で、人間の力で何とかならないものはない」と信じて妖怪や仙人を排除しようとする官吏。「そのような者がいる事で救われる民もいるのだ」とその存在を認める玄宗皇帝。

「人間界なんか捨てちゃえよ」と迫る仙界と、「感情があるからこそ(つまりはバカだからこそ)人間はいいのだ」と思う僕僕先生。

こういうところには惹かれます。

なので「大好きとは言えない」と言いつつ2冊目の文庫も買ってあります(笑)。

……息子ちゃんにはどうかなぁ。あんまりウケない気がするというか、変に王弁に共感されてもビミョーですね。