クイーン
『靴に棲む老婆』/エラリー・クイーン
1月末に感想をupした『ドラゴンの歯』から5か月ぶりのクイーン作品。
クイーンの執筆順としては『ドラゴンの歯』の次はライツヴィルシリーズ第1作目『災厄の町』。その後にこの『靴に棲む老婆』が来ます。
国名シリーズからがらりと趣を変え、「クイーンの最高傑作」とも言われる『災厄の町』ですが、発表当時は出版を拒否されることもあったそう。だからなのか、この『靴に棲む~』はまた、軽妙なパズルミステリーに戻っています。
マザーグースをモチーフにした、どこか嘘っぽい、フィクションならではの謎解き。父親クイーン警視やおなじみヴェリー部長、プラウティ医師も出てきて、なんかやっぱりホッとします。
マザーグースをなぞるように事件が起きるだけでなく、章題にも童謡の一節が使われ、登場人物一覧には「クリットンデン博士……はあきれかえる」なんて紹介が。ふふ、クイーンさんたら心憎い。
途中、お芝居の脚本のように書かれている箇所があったり、エラリーと警視とのやりとりも楽しいし。
さて、お話は。
靴作りで財をなし、庭先に銅像ならぬ「靴」像を作り、靴を模したベッドで寝ている、文字通り「靴に棲む老婆」コーネリア・ポッツ。彼女には6人の子どもがいて、上の3人は前夫の子、下の3人は現在の夫の子ども。
前夫との間にできた3人はそれぞれ変人で、長男サーロウはやたらに名誉毀損の訴訟を起こし、長女ルーエラは自身の研究にしか興味のない自称「発明家」。そして次男のホレイショはおとぎの国に住む「永遠の少年」。
靴事業の実質的な運営は今の夫との間にできた双子の男子二人が担っているのだけど、母親コーネリアは上3人の方を溺愛していて、夫にも、下の3人の子にも、家族としての情を抱いていない。
下の3人のうちの一人、赤い髪の令嬢シーラとポッツ家のお抱え弁護士チャーリーは恋仲で、クイーン警視とチャーリーが知り合いだったことから、エラリーはポッツ家と関わり合いになることに。
溺愛されている3人と、「むしろ母親は自分たちを憎んでいる」と感じている下3人の仲が良いわけはなく、ひょんなことからサーロウと双子の片割れロバートは銃で決闘をすることに。
「この時代に決闘だなんて!」
と眉をひそめつつも、サーロウが言い出したら聞かないことを知っているチャーリーたちは「銃の弾、抜いときゃいいじゃん」と考えて、細工をした上で決闘を行わせます。
エラリーは介添人および司会を務め、警視やヴェリー部長も立ち合いのもと、サーロウとロバートは背中合わせで拳銃を構え――。
で。
なんと、ロバートは死んでしまうのです。
その場に警察官もいたというのに(それどころか見守っていたわけですが)、決闘で人が殺されてしまう。しかも、犯人は銃を撃ったサーロウではないのです。
空砲を込めておいたはずの銃。サーロウ自身にその銃をすり替える機会はなかった。誰かがもう一度細工をした。その誰かこそ、ロバートを死なせた張本人。
面白いですよね、これ。撃った人間はわかってる。でもそいつは犯人じゃない、って。
手がかりも掴めないまま第二の殺人が起こり、とある「告白状」により事件は落着したかに見えたものの、エラリーには腑に落ちないことがあり。
ぽんぽんテンポ良く進んで、しかも事態が二転三転、どんどんページを繰ってしまいます。ポッツの上3人の子どもたちを「キ印」と表現してしまうところなど、今の目から見ると少し残念ですが、謎解きはよくできていて、最後まで面白く読めました。
「もしかして?」と思った真相がだいたい合ってたのも嬉しかった。ふふふ。
エラリーがいるがゆえに――トリックを見破れる人間のためにトリックを仕掛ける、みたいなのもよくできてる。
最後にエラリーがまた女ったらしなところを見せるのが余分ですけども(笑)。
ハリウッドものではポーラに一目惚れ、『災厄の町』でもヒロイン・パットにちゃっかりキスしてたエラリー。またエラリーがモテるよね。しゅっとした男前で頭が良くてキザ、しかも事件から救ってくれちゃったりするんだから、「あなたとご一緒なら」とヒロインが言っちゃうのも仕方ないか。
【早川新訳版:越前敏弥さん訳)】
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