(※以下ネタバレあります、これからご覧になる方はご注意ください)



月城さん&海乃さんのサヨナラ公演、4月10日の公演を観てまいりました。とにかく月城さんの美しさ、格好良さが印象に残った公演でした。月組公演、もっと観てればよかったなぁ。

お芝居『Eternal Voice~消え残る想い~』は正塚先生の作/演出。正塚先生の作品観るの何年ぶりだろ。昨年『愛するには短すぎる』の再演を配信で楽しみましたけど、新作を大劇場で拝見するのは2016年雪組の『ケイレブ・ハント』ぶり!?
Wiki見ると「私がただ見てなかっただけ」ではなく、大劇場では本当に8年ぶりの正塚作品だったみたい。(バウ公演では2018年に『デビュタント』を手がけていらっしゃる)
プログラムのお写真もすっかりおじいちゃんになられて…。

幕開き、登場人物がわーっと出てきて群舞というか「群像」を織りなす中、主人公が現れテーマ曲を歌い上げる……あああああ、正塚先生だぁぁぁぁ!
大好きな『BLUFF』も『銀の狼』もこんな始まり方だよね。作曲は玉麻先生だけど、曲の雰囲気も正塚作品ぽかった。(『BLUFF』『銀の狼』をはじめ正塚作品といえば曲は高橋城先生のイメージだけど、高橋先生、昨年の夏に亡くなられてらした→訃報記事

「ここに生きていたと」
「時を超え いつの日にも」

歌詞も好きな世界観で、オープニングの場面でもううるうるしてしまった。また月城さんの歌がいいのよ……。

お話としてはちょっと不思議な感じで、序盤は少し退屈な感じがしたけど、会話の妙で魅せる正塚作品、ちょっとした掛け合いが面白く、月組の皆さんの芝居心を堪能。映像をうまく用いた舞台セットも良かったなぁ。

時は19世紀後半、ヴィクトリア女王治下のイギリス。アルバート公逝去のあと、女王は喪に服してもう何年も公務に出てこない――と作中で言われていたので、1865年とか、それぐらいの時期。

月城さん扮する主人公ユリウスの肩書きは一応考古学者。「一応」というのは、古美術商の叔父ジェームズに頼まれ、アンティークハンターとしてあちこち飛び回っていることの方が多いから。
ある日、オークションからの帰り道で、ユリウスは農夫から「メアリー・スチュアートの首飾り」を買ってくれと頼まれます。鑑定書もなく、宝石としての値打ちしかない、と一旦は断りかけるものの、不思議な直感に襲われ、ユリウスはその首飾りを買い取ります。

実はユリウス、子どもの頃から「謎の直感」があるんですね。「誰かに呼ばれているような気がする」――「物」に込められた想いが、彼には聞こえるよう。

で、ユリウスはその首飾りの真偽を確かめるべく、友人ヴィクターのもとを訪れます。鳳月さん扮するヴィクターは超常現象研究所の所長にして秘密局のプロファイラー。ユリウスにしてもヴィクターにしても、いちいち設定の情報量が多い(^^;)

折しも研究所ではアデーラという女性が「超能力」の実験を行っていて、彼女は首飾りを目にしたとたん、「メアリー・スチュアートの遺品」だと言い当てる。
アデーラもまた、ユリウスと同じ――ユリウス以上に、「物」や「場所」に込められた想いを感じとる能力を持った人間だったのです。

アデーラ役はもちろん海乃さん

自分の能力を恐れ、どちらかといえば忌避していたアデーラ。
一方ユリウスは、幼い頃から周囲に奇異の目で見られながらも、能力を前向きにとらえ、「足が速い」「歌がうまい」といった才能と同じじゃないか、と語る。
アデーラがユリウスの存在に救われるのはもちろん、ユリウスもまた彼女に惹かれていく。

二人が「メアリー・スチュアートの心臓」を探し当てたりする一方、国内には反乱を企てる一派が暗躍。ヴィクトリア女王がすっかり隠遁してしまっているのは実は呪術師による呪詛のせいで、その背後には王室を廃止し、カトリックを国教にしようともくろむ急進派の議員がいた。

彼等の企みを阻止しようと動く秘密局。ヴィクターを通じ、また、「メアリー・スチュアートの首飾り」を通じてその攻防に巻きこまれていくユリウスとアデーラ。さて、二人の行く末は――。

今こうしてあらすじを書いてて思ったけど、この話、かなりこみ入ってますよね。主役2人はもともと事件の当事者ではなくって、2人の交流と「陰謀」とが交互に――同時に描かれていく感じだったんですけど、「サヨナラなのに月城さん&海乃さんの出番少なくない!?」ってぐらい、秘密局の場面とか呪術師たちの場面が多かったような。

オカルトと政争とロマンス、そしてメアリー・スチュアートの「消え残る想い」。よくこれちゃんと「宝塚」としてまとまるなぁ、と今さら感心してしまいます。さすが正塚先生。

ユリウスって「どういう人間か」を説明しにくいキャラクターだと思うんだけど、月城さんが演じるととにかく颯爽と格好良くて、月城さんがいるだけで「宝塚」が成立してしまうところはあります。「叔父さんだけが僕を奇異の目で見なかった、だから叔父さんのもとに来た」という台詞があって、自分の奇妙な能力に対して色々葛藤はあったんだろうけど、でもそれを軽やかに乗り越えて颯爽としてる。

個人的にはもうちょっと鳳月さんと絡んでほしかったけども。正塚作品おなじみ、トップと二番手との掛け合いナンバーが欲しかったなぁ。
鳳月さん演じるヴィクターも、なんか難しい役だよね。ユリウス側の話と陰謀の話とを繋ぐための存在で、ユリウスの親友という設定だけども、そこはそんなに描かれてないし。
「超能力なんてイカサマだと思ってるんだろ!」と秘密局の人間に何度か喰ってかかるのが面白かった。絶妙の「間」でくすりとさせてくれる。

海乃さんのアデーラは、前作『フリューゲル』の派手なロックスターとは打って変わって控えめな、自分の能力に怯える女性。ユリウスとの出逢いで次第に明るく、強く変わっていく。海乃さんの大人っぽい美しさと役の雰囲気に、なんか『追想』のバーグマンを連想しました。海乃さんと月城さんで『追想』やったらすごく良さそう。

三番手風間さんは秘密局の局員ダシエル役。……すいません、全然印象に残ってないです……。これといって目立つ場面なかったよね? 地味な役だったよね……。

ユリウスの助手みたいな立ち位置で古美術買い付けなどに同行する若者カイを礼華はるさん。礼華さん、とても良かったです。特にキャラ付けがあるような役でもないんだけど、ユリウスとのやりとりとか巧くて、「誰がやってるんだろう」って印象に残る。

女王を呪う呪術師マクシマスは彩海せらさん。彩海さんは顔が良かった、好み(笑)。マクシマスの姉で霊媒師のエゼキエルを彩みちるさん。昔ならリンゴさん(小乙女幸)がやってたような濃ゆい役で出番が多い。多すぎる(笑)。だいぶうっとうしかったけど、それだけ彩さんの悪女芝居がうまかったということかも。

冒頭、ユリウスに首飾りを売りつける農夫の妻を副組長の白雪さち花さんが演じてらして、夫から「こいつの叫び声はサイレンよりうるさいから」と言われているのが面白かった。でもその声の実力、聞かせてもらえなくて残念。

あと、ユリウスの叔父ジェームズと、その恋人アマラの場面がとても良かったです。最初この二人、「夫婦」だと思って見てたんだけど、「古美術店のオーナーと店長」という間柄で、公私ともにパートナーだけど結婚はしてないみたいだった(「奥様」と呼ばれてアマラが喜んでる場面があった)。
ジェームズ役は専科の凛城きらさんがキャスティングされていたのだけど、私が観た公演では凛城さん休演により佳城葵さんに。ちょっと頼りない感じもありながら気のいい叔父さん、急な代役にもかかわらず、素敵なお芝居でした。
アマラ役は羽音みかさん。ジェームズとの掛け合いが良く、見た目もキュートだった。

次期トップ娘役に決定している天紫珠李さんは秘密局員エイデン役。デキる女スパイといった感じの役で、スパイだから衣装も地味だし、あまり印象に残らなかった……。

ヴィクトリア女王役は組長梨花ますみさん。梨花さん長い!!! 1981年初舞台だから…34年目ぐらい? ミキちゃん(真矢ミキ)やカナメさん(涼風真世)と同期でいらっしゃるんだもんね。私が足繁く通っていた頃にもう副組長とか務めていらしたような。

最後、アデーラが「自分が生まれてきた意味がやっとわかった気がする」「役目は終わったからこれからはありのまま生きる」みたいなことを言って、ユリウスが「僕はまだわからない」と応じると、「あなたはきっと、これから見つけるのよ」とアデーラが答えて。
サヨナラを意識した台詞ですよね、これからまた、新しい道に進んでいくお二人。

「ここに生きていた」――「消え残る想い」というテーマそのものが、お二人へのはなむけ。

正塚先生の作品って、ラストシーンで主役がヒロインにかける言葉がいつも印象的なんですけど(『BLUFF』の「一緒に持ってくぞ!」とか)、今回は「ではありのまま、よろしく付き合ってくれ」でした。割と直球? いや、でも、「よろしく付き合う」ってどういうこと!?という気もするな。「恋人として」みたいなことはお互い一言も言わないところが正塚作品ですよね、ふふふ。


ショー『Grande TAKARAZUKA 110!』は中村一徳先生の作/演出。昨年宙組の『Sky Fantasy!』も一徳先生で楽しみにしてたのに中止になってしまって…。

一徳先生のショーを生で拝見するのは2021年の『The Fascination!』以来かな?
とても良かったです!
音楽も、入れ替わり立ち替わりスターさんが舞台に現れる「絵の作り方」も、一徳先生のセンスが本当に好き。別に先生ご自身が作曲や振付をしてらっしゃるわけじゃないのに、毎回「これよ、これ!」って感じで楽しい。

月組で、月城さん&海乃美月さんのサヨナラということもあり、全体を貫くテーマは「月」。宝塚110年をイメージしたらしき美しい映像が流れたあと、プロローグは「黄金の月」。
衣装がゴージャスで月城さんの美しさが映えるーーーーーーー! 主題歌も耳馴染みよく、全員が勢揃いして、本当にわくわくするプロローグ。

中詰めは赤い衣装でスパニッシュ。ここがまた入れ替わり立ち替わりで最高に盛り上がる! 客席降りもあって熱い!!

続いて初舞台生によるロケット。よく揃っていて良かったです。

で。
その次の「雪月」の場面がまた!!!!!!
平安貴族風衣装の月城さんが麗しく、麗泉里さんのソロ「荒城の月」がめちゃくちゃうまくて、和の雰囲気を漂わせつつ、月城さん以外は銀色のスーツやドレスで。
プロローグがまばゆい黄金の月なら、この場面は静謐な白銀の月。雪組と月組という、月城さんの宝塚での歩みを一場面に凝縮した見事な構成。
最後、長い長い裾(?)を付けて階段を登り、登り切ったところでパッと振り向いて暗転。
良い! すごく良い!!!

フィナーレ男役燕尾の大階段は格好良く、「My Best Friend」の曲に乗せて月城さん鳳月さんのバトンタッチ風のところがあったり、退団者さんとのハグ?っぽい流れがあったり。

どの場面の衣装もよく似合って月城さんが美しく、歌も伸びやかで。
素敵なショーでした♪
はぁぁ、もう一回観たい~~~。