(※写真は一緒に綴じられている月報の最後のページ(訳者と画家の紹介)と、登場人物紹介が書かれた栞。月報は覚えてたけど栞は記憶がなかった。親切)

はい、そんなわけで、せっかくなので『ラーマーヤナ』だけでなく、他の作品も全部読みました。
この41巻には
『アラビアン・ナイト』
『王書物語』
『トルコ民話』
『ラーマーヤナ』
『インド民話』
『カブールからきたくだもの売り 他3篇』

が収められています。

解説者さんが「この1冊で中国以外のアジア全部とか、無理に決まってんだろ!」と嘆いていた、と『ラーマーヤナ』の記事に書きましたが、アジア全部も無理なのに、本文400頁中の半分以上、222頁までが『アラビアン・ナイト』だったりします。

「残り半分で中国とアラビアン・ナイト以外のアジア全部っておまえ!」と、編集会議でさぞや揉めたのではないでしょうか。ともあれ順に見てまいりましょう。


【アラビアン・ナイト】

皆さんご存知の通り、『アラビアン・ナイト』はシヘラザードが夜な夜な王に語って聞かせるお話、いくつもの物語からなっています。その中からこの文学全集に選ばれたのは

「船乗りシンドバッドの物語」
「紺屋のアブ・キルととこ屋のアブ・シル」
「道化者ハサン」
「アーマッド王子と仙女ペリ・バヌ~空とぶじゅうたんの話~」
「アラジンとふしぎなランプ」
「アリ・ババと四十人の盗賊」
「ぬすまれたさいふ」
「ホスロー王と漁師」
「ちえくらべ」

の9篇。「ぬすまれたさいふ」」以下の3篇はとても短く、とんち小話といったところ。

「シンドバッドの物語」は以前、斉藤洋さん版を読んでいるのですが、本当に主人公のシンドバッドが懲りないっていうか、毎回死にそうな目に遭うのに懲りずに出かけて行くその胆力がすごい。そして毎回自分だけが生き残り、前より金持ちになって帰ってくる。

すでに冒険からは引退して悠々自適の老シンドバッドが、自分と同じ名の貧しい男にこれまでの冒険譚を語り、最後に「いまの身上をきずきあげるまでには、人一倍苦労し、ずいぶんあぶないめにもあってきたんだよ」(P61)と言って、貧しいシンドバッドの方が「ただわけもなくねたましくおもったりして、どうか、おゆるしください」(P62)と答えたりするんだけど。

え? そういう話ではないよね???

苦労とかそういうレベルじゃないし、毎回なぜかお金持ちになってしまうのは、怪物やなんかに襲われたこととは関係がないっていうか……同行していた人間はみんな死んじゃってるんだから、この話を聞いて真似して「よし!俺も金持ちになるために冒険すっぞ!」って言って出ていっても、まず間違いなく普通は死ぬし、生き延びてもたぶんすっからかん、着の身着のまま、ほうほうのていで家に戻るのが関の山だと思うんだけどなー。

「アブ・キルとアブ・シル」のお話は同じく斉藤さん版のアラビアン・ナイト『空飛ぶ木馬』で読んだことがあったんだけど、まったく覚えてませんでした。はははは。新鮮に面白かった(笑)。斉藤さん版では「染め物屋」と訳されていたのが「紺屋」となっているところが昭和35年。

最後に墓標に刻む歌が「人を呪わば穴二つ」なんだけど、この言い回し、アラビアン・ナイト発祥だったんでしょうか? ググると陰陽師の話とかが出て来るので、訳者の方が日本でも馴染みのある言い回しに置き換えて訳した、ってことなのかな。斉藤さん版ではどう書かれていたんだろう……。

「道化者ハサン」も面白かった。
最後のくだり、「妻と二人で死んだふりして香典をせしめる」っていうのが「ええええ」って感じで、騙された教主と妃が咎めるどころかむしろ笑って、「これは、おぬしがあの世へいかなかった祝いじゃ」(P109)とほうびをやり、俸給まで増やしてやる、ってちょっと。
教主様いい人すぎない? 太っ腹すぎない!?

「空とぶじゅうたんの話」は前半と後半で話ががらりと変わって、じゅうたんは前半に出て来るだけ。前座のような感じです。
3人の王子全員が美しいいとこの姫を好いていて、王様は姫を誰と結婚させようか思案する。そして「世界を回って、最も珍しい品物を持ってきた王子に妻合わせる」と決めるのですね。ちょっとかぐや姫っぽいですが。
その結果、空とぶじゅうたんや何でも見たいものが見られるのぞき眼鏡、どんな病人もたちどころに治せる魔法のりんごが集まるのですが、どれが一番珍しいか決められないので、結局「矢を一番遠くまで射た者」にしよう、って、それすごい普通じゃないですか。最初からそれで決めとけば良くない?

なぜか射た矢が見つからなかったアーマッド王子が仙女ペリ・バヌと出逢って――もう魔法のじゅうたんはどうでもよくなる。
なんだそれ。

「アラジンとふしぎなランプ」は皆さんよくご存知の「ランプの精」の話。指輪の精も出てきます。アラジンは「中国のある都に住んでいる貧しい仕立屋の一人息子」となっていて、「え?アラジンって中国人だったんだ!」と思いました。

「ひらけ、ゴマ!」でお馴染み、「アリ・ババと四十人の盗賊」も以前斉藤さん版で読みました。文学全集版でもやはり「モルギアナと四十人の盗賊」と言いたくなる展開です。盗賊の企みを見抜き、退治するのはアリ・ババではなく使用人のモルギアナ。煮えたった油を浴びせて盗賊達を一人残らず焼き殺すモルギアナちゃん、知恵も度胸もマジすごい。

『アラビアン・ナイト』部分の訳者は大場正史さんという方なんですが、この大場さん、ちくま文庫のバートン版『千夜一夜物語』の完訳者でもあらせられます。いや、ほんと、ぜーたくだな、この全集。


【王書物語】

最初「王書物語?何それ」と思ったんですが。
「王書」って「シャー・ナーメ」のことなんですよね。それなら知ってる、聞いたことある!

イランの詩人フィルドーシーによって近世ペルシア語で書かれた6万句にのぼる大作叙事詩。当時の王様マハムードに招かれ、その王様に捧げられたことで「王書」と呼ばれるのですが、この詩の1行ごとに金貨1枚もらう約束だったのが、実際に与えられたのは銀貨で、怒ったフィルドーシーは逃げ出した末、王様に追われて……と解説にあります。

成立過程そのものがドラマティックですねぇ。

何しろ6万句もあるので、ここに収められたのはほんのわずか、英雄ロスタムにまつわる短いエピソードのみ。しかしこれがなかなか面白かった。

「ロスタムとソホラーブの一騎討ち」、ソホラーブというのはロスタムの息子なのですが、お互いにお互いの顔を知らないのです。
イランの勇将ロスタムはひょんなことからサメンガンを訪れ、美しい姫テヘミーネと結婚します。しかしなぜか彼はその結婚を秘密にし、テヘミーネを置いてイランに戻ってしまう。
その後テヘミーネはソホラーブという男の子を生むのですが、このソホラーブ、通常よりも成長が速いのですね。あっという間に大きくなり、10歳ばかりでもう見た目は大人、サメンガン一の力持ちになっている。

母から自分の父親が英雄ロスタムだと知らされたソホラーブは、「トラン(イランと長く戦争を続けている国)の軍勢を率いてイランを攻め、王を打ち倒して父上を新しい王に据え、一緒にトランを滅ぼしてイランとトラン、両方を我らの手中に収めましょう」などとデカいことを言い出す。

それを知ったトランの王アフラシアーブは「親子と知らず、二人を戦わせてやろう」と企みます。

「もしロスタムがソホラーブの手にかかってうたれたら、イランの国はこちらのもの。(中略)ソホラーブがロスタムのためにうたれても、わが子を手にかけたら、ロスタムは、よもやおめおめ生きてはいられまい」 (P239)

悪い奴ですね~、アフラシアーブ。

そしてその通りになっちゃうんだなぁ。何しろソホラーブは父の顔を知らないし、父の方は子の顔を知らないどころか、「テヘミーネが子を産んでいたとしても、まさかこんなに大きくなってるわけがない」と思っちゃうわけ。
ここで「通常より成長が早い」が生きてくるとは。

捕虜に「あれがロスタムだろ?」と聞いても、捕虜は頑なに答えないし、唯一ロスタムの顔を知ってたソホラーブの叔父もロスタムを確認する前に殺されちゃう。とうとう一騎打ちになって、ソホラーブは「あなたこそロスタムでしょ?」と直に尋ねるのに、ロスタムはうんと言わない。

もうね、読んでて、「うああ、もう!なんで!ほんとのことを!言わないの!!」とイライラやきもき。ソホラーブもソホラーブで、「自分はロスタムの息子」って言えばいいのに、それを言うとトラン側から殺される可能性があるから言えないらしく。

いや、でも、一騎打ちの時には言ってもよくない? せめて「母はテヘミーネ」って言ってれば。

ロスタムはテヘミーネに「子どもが生まれたらこれを」としるしの品を渡してもいて、ソホラーブはちゃんとそれを身につけてるんだけど、鎧の下に隠れてるんだよ!!!
あー、もう、何のための目印!!!

結果、ロスタムはその手で息子を殺してしまうのです……あああああ、どうしてこうなった。

いまわのきわにソホラーブは言います。

「さりとは、かたくななおふるまい。いくどお名まえをおたずね申したことか」 (P254)

ほんとにね……。ロスタムはもちろん真相を知って嘆き悲しむんだけど、ソホラーブの方は「もうなげくことはやめましょう。これが前世のやくそくであったのでしょう」(P254)と達観している。
さらにソホラーブ、「いくさはもうやめてください」とロスタムに請うのです。

「この戦いの責任は、わたしがおわねばなりません。守ったり、ふせいだりしてやらねばならぬこのわたしが、このようになりましたからとて、兵士どもまで 道づれにはできませぬ。わたしは風のようにあらわれて、風のように去っていきます」 (P255)

ソホラーブ……なんという立派な……。見た目こそ成長しているとはいえまだ10歳ばかりなんでしょう? 大人たちよりよほど「将」としての覚悟があるじゃないの。

実話をもとにしたお話なのか、すべてフィルドーシーの創作なのかわからないけど、読者をやきもきさせるすれ違いの展開、見事です。

訳者さんによる「はしがき」には

ヨーロッパがまだひらけなかった西暦9~13世紀ごろ、西アジアを中心とするイスラム諸国はたいへんひらけていました。 (P224)

善神アフラマズダのおぼしめしにかなったおこないをするものはさかえ、邪神アハリマンがよろこぶようなわるいおこないをするものはほろぶということが、くりかえしかたられています。 (P224)

と書かれています。「王書」の成立は10世紀頃。ロスタムはアフラマズダのおぼしめしにかなわなかったんですかねぇ。

もっと読んでみたくなりますが、6万句すべて完訳したものはどうもなさそう。岩波文庫版、東洋文庫版ともに抄訳のようです。岩波の方が散文訳で読みやすそうかな。


この文学全集では「王書物語」というタイトルになっていますが、おそらく叙事詩を散文に――「物語」としてまとめてあるからなのでしょう。確かシェークスピアも「シェークスピア物語」というタイトルで入っていました。「戯曲」ではなく散文で訳してあるのですよね。


【トルコ民話】

入っているのは「ろば耳の王子」「ナスレッディン・ホジャの小話」の2編。
「ナスレッディン」の方は「附子」に似た話など、ちょっとしたとんち話の集まりです。
そして「ろば耳の王子」の方は。

これってまんま「王様の耳はロバの耳」なのでは???

王様じゃなくて王子様だけど、年取ってるらしいし、王子様の耳がロバの耳なのを知った床屋がどうしてもそれを黙っていられなくて、山奥のほらあなで「王子様の耳はロバの耳ー!」と叫ぶ……。

誰もいないほらあなで、誰にも聞こえないはずが、こだまとなって山のふもとに轟き、町のものみんなの耳に入ってしまう。ロバ耳であることを知られてしまった王子はもう町にいられず、一目散にどこへやら。床屋がどうなったのか、それもわからないまま The End。

えええ。なんというオチだ。

王子がロバ耳になったのは「ふえの精の王」に逆恨みされたせいなんだけど、羊飼いの若者と、ふえの精の王と、どっちが笛がうまいかで勝負して、王子が「若者の方がうまい」って言ったから「おまえの耳は節穴か!」ならぬ「おまえの耳はロバの耳か!」でロバ耳にされるという……。

最初に笛勝負に勝った羊飼いもどうなったかわからなくて、最後、「いまもあの笛の音が聞こえてきます」とかで終わって、ええ、これ笛の話なの? 王様、ロバ耳にされた上に国から逃げ出しちゃったんだけど……と唖然としてしまう。
昔話とか民話ってこんなものかもしれませんけども。

ちなみに本家「王様の耳はロバの耳」はイソップ寓話の一つで、ギリシャのミダス王の話らしい。この「王子」の方はアナトリア西南部の山岳地帯に伝わるお話だそうです。


【インド民話】

短いお話5編が収められています。

「四人のバラモンのたからさがし」が面白かったです。「学問よりも分別」。なるほど。

あと「わにの王さま」。百姓の娘がわにの王様に見初められて川の国へ嫁いでいくお話なんだけど、「わにの国なんか行かされて可哀想に」と思うとそうじゃないんだよね。外の世界では「わに」だけど、国の中では王様は美しい若者。なので娘はおきさきとして幸せに暮らし、娘の父母も一緒にずっと川の国に住むことにしました、めでたしめでたし。

泉鏡花の「海神別荘」を思い出させるお話でした。(※「海神別荘」は青空文庫で読めます)


【カブールからきたくだもの売り 他】

タゴールの著作4編が収められています。
まず、訳者山室静さんによるはしがきの熱量がすごい!

東洋では、いままでにただひとりノーベル文学賞をもらった人です。 (P370)

川端康成の受賞は1968年、なるほどこの本が出た時にはまだもらっていません。タゴールは1913年に受賞、インド国歌の作詞作曲もしているそう。作曲も、ってとこがすごいですね。

タゴールは、7,8才から詩を書きはじめ、15才でさいしょの詩集を出していらい、(後略)(P370)
詩が本領ですが、小説にもすぐれていたことは、ここに訳したみじかい作品からも、じゅうぶんにうかがわれるでしょう。どうか、みなさんも、こういう東洋のすぐれた詩人に、もっと注目してください。タゴールは、日本にも三どきています。 (P370)

で、表題作となっている「カブールからきたくだもの売り」。良かったです。最後鼻の奥がツーンとなってしまった。
語り手の幼い娘と仲良しになったくだもの売り、その後ちょっとしたことで牢送りになり、月日を経てやっと出所、「小さいお嬢さんにお目にかかりたい」とやってくるのですが、その日はちょうどその「お嬢さん」の結婚式の日で……。

くだもの売りの心の中ではずっと小さいままだった女の子。実は彼には故郷に残してきた幼い娘がいて、その子と彼女を重ね合わせていたのだけれど、実の娘も今や小さいままではない、無事でいるかどうかすら――。

誰も子どものままではいない。時は流れて行く。

これ、「カブリワラ」というタイトルで世界中で読まれている有名な短篇なんだそう。日本語で読めるもの(今も入手可能なもの)は少ないようですが、ポプラ社百年文庫の「森」の巻などに入っています。

(※2024/09/12追記 kindleのみで『カブリワラ』邦訳が出ていました→Amazonで見る

「むかし、ひとりの王さまが――」。これは最後「えーーーーー」となりました。なんだそのオチは。語り手の少年がおばあさんから聞いたお話、ってことになってるんだけど、もしかしてタゴール氏のおばあさんが本当に即興で語り聞かせてくれたお話だったりするのかしら。

おとぎ話の王さまには、たいていおきさきが、いく人もあるものです。 (P385)

さすがインドやで、って感じですが、まぁ日本でも昔だとお妃はたくさんいますね。
インドなのでおとぎ話の王様も苦行で森に行くし、しかも12年も行きっぱなし、その間に王女が大きくなって自分の娘とわからないし、テキトーに「最初に出逢った男子と結婚」させるし…。

最初に出逢った男子、まだ7歳のたきぎ拾いの子が姫の結婚相手に定められ、姫はその男の子と一緒に暮らしながら彼が大きくなるのを待つのです。男の子に自分の正体を尋ねられても、「そのうちに話しますから」とはぐらかしながら。

そしてついに男の子が年頃になり、「今夜こそ話しますわ」と姫は花嫁衣装に身を包んで寝室に入っていくのですが……。

男の子、死んでるんですよ。

姫が美しく寝台を飾った花々の中に毒蛇がいて、そいつが男の子を咬んでいた。

ええええええええええ、何それ何それ何それ!!!!!

おばあちゃん、こんな話子どもに聞かせたらあかんやん。最後はハッピーエンドにしてぇな。

「故郷へのあこがれ」という短篇も可哀想なお話でした。弟ばかりが可愛がられて居場所のないお兄ちゃん。母ちゃんに愛されないからとおじさんのところへ行くものの、おばさんに邪魔者扱いされ、やっぱり居場所がなく、故郷へ戻りたいと思うものの……。うう、つらい。

この人間世界で、十四になる少年ほど、しまつのわるい、やっかいな存在はありません。 (P398)
ちょうどこのころが、人にすかれない、育ちざかりの年ごろなのです。(中略)おさない子どものころなら、欠点もやすやすとゆるせるが、十四の少年では、やむをえないあやまちでも、なかなか大めにみてやることができません。少年自身も、気のどくなほどじぶんを意識するようになって、(後略)(P398)
しかし、だれもかれも、おおっぴらには愛してやろうとしません。なぜなら、そんなことをすれば、子どもをあまやかしすぎて、子どものためにならない、と考えられているからです。 (P399)

はぁ、ほんと、私別に少年じゃないけど身につまされる……。山室さんのはしがきの通り、タゴール氏の観察眼、表現力がうかがえる4編でした。

ちなみに山室静さんはどちらかというと北欧ものの訳書が多いよう↓

【総括】

改めて、すごい文学全集だなぁと思いました。
この1冊だけで『アラビアン・ナイト』に『シャー・ナーメ』に『ラーマーヤナ』、そしてノーベル文学賞作家の作品にまで触れることができる。

こんなのが50巻あるって。

めちゃくちゃだよね。
よくこんな全集を企画出版したよなぁ。そんで一般人がよくこんなの買ってたものだ……。

当時図書館ってまだ今ほどメジャーじゃなくて、どの市町村にもあるってものでもなかったはずなので、「図書館向けの企画」というわけではなかったと思うんですよ。実際うちの祖父が娘のために買ってるわけだし。

ちなみに1冊の定価は380円。当時の380円って今で言うとどれくらいの値段なんだろう。

久しぶりに手に取ってみて、本当に懐かしかったし、ボロボロだったり、紙が黄色くなって、月報のインクが褪せているのとかがまたたまらない、紙の本ならではの“味”でした。

「古さ」が――ちゃんと「時が流れた」っていうのがね。ただお話が載っているだけじゃなくて、そこには「過ぎた時間」までが収録されていて。

この間Twitterで、アニメ作品について「リマスターしちゃったら昔っぽくなくてつまらん」というふうに言ってる方がいて、「めっちゃわかる」って思いました。
きれいな方がいいとは限らないんですよねぇ。

流れた時間を、なかったことにするのは野暮かもしれない。

いつか、近いうちに、この文学全集も「禁帯出」になってしまうかもしれない。それどころかボロボロすぎて廃棄処分になるかも。

そうなる前に、もう何冊か、取り寄せてみようと思います。


【関連記事】

講談社『少年少女世界文学全集 41巻 東洋編(1)』~「ラーマーヤナ」~

講談社『少年少女世界文学全集 3巻 古代中世編(3)』~「ニーベルンゲンの歌」~

講談社『少年少女世界文学全集 3巻 古代中世篇(3)』~「聖杯王パルチファル」など~

講談社『少年少女世界文学全集 3巻 古代中世篇(3)』~「剛勇グレティル物語」など~