ン十年ぶりに『ゴーショーグン』のノベライズを読み返しました。
コロナ禍で図書館が休館になって、いい機会だから昔の作品を読み返そうかな、と思って本棚の奥から引っ張り出してきた。



でもなんとなく本を読む気力がわかず、ずっとほったからし。やっとこの間1作目を読み終わりました。
1作目はTVシリーズのほぼ忠実なノベライズ。と言ってももうTVシリーズもン十年見ていないのでどこまで一緒なのかよくわからないんだけど。

TVシリーズはAmazonPrimeVideo内のdアニメストアで見ることができます。「U-NEXT」でも配信されているらしい。

全26話、小説版は全12章だからだいぶ抜粋されている感じ。
キリー、レミー、真吾の過去が絡む第5話「地獄のファンタジーランド」、第12話「別れのモンマルトル」、第16話「さらば青春の日々」がそれぞれ同じタイトルで第3章、第5章、第6章に。
第20話「宇宙中継これがドクーガだ!」が第7章に、第22話「浮上地底からの謎」が第8章「浮上する地底の謎」、第24話「海の敵を叩け」が第10章、第25話「決戦秒読み開始」が第11章「決戦への秒読み」、そして最終26話が第12章「果てしなき旅立ち」

後半というかクライマックスは端折れない分、前半がかなり犠牲になってる感じですね。

各章の冒頭には、「宇宙中継これがドクーガだ!」でゴーショーグンチームのインタビューをするジャーナリスト、イザベルとその父親クロンカイトによる調査記録が付され、そこで端折った分の捕捉がされています。

アニメで絶妙だったレミー、キリー、真吾の掛け合いを文章で再現すべく、ポンポン言葉が飛びかうシーンでは地の文ではなく絵文字で誰の台詞かが示されています。
レミーは猫、キリーは狼、真吾は桜、ブンドルは薔薇、ケルナグールはフライドチキン、そしてカットナルはカラス。

ゴーショーグンをまったく見たことがない人のためにお断りしておくと、「戦国魔神」とか「ショーグン」という名前とは裏腹に、戦国も将軍もまったく出てきません。
何の関係もない。

舞台は近未来――と言っても「21世紀初頭」と表現されているので、2020年の現在から見たらもはや近過去の可能性が大。
テレビ放送が1981年の7月から12月、このノベライズ版が1982年12月の刊行
今Wiki見たら舞台は「2001年」って書いてある。全然未来じゃなーい(^^;)

1981年から見れば「近未来」だった地球を舞台に、謎の男サバラス率いるグッドサンダーと、世界を裏で牛耳る悪の組織(この設定が昭和よね)ドクーガとの戦いが描かれる。
サバラスにスカウトされ、巨大合体ロボ・ゴーショーグンを操るレミー、キリー、真吾の3人。
移動要塞であるグッドサンダーは謎のエネルギー・ビムラーによって世界各地に瞬間移動が可能。そしてドクーガはそのビムラーを狙ってグッドサンダーを追う。
ビムラーの研究者であり、グッドサンダーやゴーショーグンの生みの親である真田博士はドクーガに殺され、その息子のケン太はグッドサンダーに一緒に乗り込んでいます。

お話の最初では10歳の少年に過ぎないケン太、メカに強く、また「メカは友だち」という持論を持っていて、実はビムラーの鍵を握る人物なんですよね。

なんせレミー達3人の掛け合い漫才が楽しいアニメで、ロボットはおまけ、ビムラーとケン太の話も割とどうでもよかったんですが、本来この物語の主人公はたぶんケン太で、最終回で「果てしなき旅立ち」をするのもケン太。

アニメを見ていた当時は知らなかったけど、このエンディングって『幼年期の終わり』ですよね。宇宙から飛来した大いなる意志に導かれ、「宇宙へはばたく資格を持った魂たち」が地球の生命とは違う“何か”になって飛んで行く。

人類代表としてはケン太だけで、あとは風や森や海や岩といったものたちの“ソウル”。

ゴーショーグンの必殺技ゴーフラッシャーが途中から「敵メカの“ソウル”を呼び起こして自爆させる」ものになっていったり、本当に「ロボット戦」に意味のないロボットアニメなんだけど、メカが自我を持ったら「人間は必要ない」と言い出して逆に攻撃が激しくなるのでは、と思ったりもします。『仮面ライダーゼロワン』のアークとか思い出しちゃう。

基本的にすべての“ソウル”は善、みたいなところが今読むとムズムズする。

ドクーガの幹部ブンドルたちも、皇帝に忠誠を誓っているわけではなく、金儲けのために――利害が一致するからドクーガにいるだけ、って感じで、続編からはレミー達と「いい仲間」になっちゃうし。

皇帝ネオネロスだけが影で一万年も地球を牛耳ってきた、っていう「わかりやすく悪いやつ」なんだけど、Wikiには「宇宙から飛来した悪の意識体」って書いてあるね。まるで『仮面ライダービルド』のエボルトみたいな(すぐ仮面ライダーで考える)。

小説版では

「人間が生み出した、同じ人間に対する恐怖、怒り……悪魔であり神であり……、さあ、わたしはいったい何なのかな……」 (P293)

と言っていて、宇宙から来たというよりは人間自身が生み出した「負のエネルギー」のように読める。

地熱基地で全世界の火山活動と地震を思い通りに操ったり、ベーリング海峡で海流を操って気候変動を起こしたり、ドクーガのやることはいわゆる「陰謀史観」、「裏で操ってる少数の悪い連中」のイメージそのもの、そうやって地震や気候変動を起こすことで株価等を操って利益を得る。

「全部ドクーガのしわざ」だったら世の中簡単なのにねぇ。

アニメを知らずにこの小説版だけ読んで面白いかって言われるとよくわかんないんだけど、この1作目があるからこそ続きの小説群があるわけで、テレビ本編のお話をすっかり忘れている私には良いおさらいになりました。

冒頭になにわ♡あいさんのゴーショーグンマンガも付いてるし、ラストにはレミーちゃんの美麗な後ろ姿とともに続編の予告。購入当時は本当にワクワクした……んでしょう、きっと。もう記憶が曖昧だけど。

しかしまだネットのない時代、付いてるカバーからして近所のさして大きくもない書店で購入したっぽいんだけど、よくこんなニッチな本、置いてあったなぁ。
まだ消費税もなく、定価380円。学生にも優しいお値段であった。

続きもぼちぼち読みたいと思います。



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