『ゴーショーグン』を読み返そうプロジェクト、ひそかに続いております。あっという間に読んだ3冊目『狂気の檻』の後、2か月かかって4作目を読了いたしました。

『狂気の檻』で冷凍睡眠装置に入った6人、11年の時を経て、宇宙のどこかで目を覚まします。覚ましたとたん、襲ってくる謎の異形生物!

もちろん寝起きだからって簡単にやられるゴーショーグンチームじゃありません。サクッと謎の生き物を排除してしまうのですが、実はそれ、「試験」だったんですよね。
見事に凶暴生物を退治した彼らは、ジル太陽系艦隊の指導者を名乗るジーという人物にスカウトされ、惑星ジルの異星人部隊に参加させられることに。

1万5千年前、惑星ジルは環境汚染によって瀕死の状態にあった。それ以上母星を汚染しないよう、ジル人は宇宙に移住することを決める。宇宙船の中で世代を重ね、いずれジル星が“美しい星”として再生するその時まで、じっと待つという壮大な計画。

ジル人の思惑どおり、ジル星には緑が復活し、それどころか“密林”になり、動植物はまた新たな進化を遂げ、殺虫剤の効かない大きな蚊や、冒頭でゴーショーグンチームを襲った巨大で凶暴なナメクジおばけのような生き物が繁殖。かつて取り残されたジル人の子孫なのか、ジー達宇宙のジル人には“人間猿”と呼ばれている“現地人”も村を作り、生活を営んでいる。

この、“人間猿”の記述が面白いです。ジー曰く、

「体型は人間でも、動物と同じです。我々は人間猿と呼んでいますが、なんと草や木の実を食べ動物の肉まで食べるおぞましい野蛮人どもです」 (P46)

ハハハハ。それって普通に地球人類ですよね。
宇宙船の中の生活に適応し、食事は無味無臭のサプリメント、無菌状態に慣れて今や母星の“劣悪”な環境(病原菌その他うようよ)では生きて行けなくなっているジル人。

それでも「あの星は我々のもの」と思っているのが実に興味深いです。

“反乱軍”殲滅という名目で異星人部隊に放りこまれたゴーショーグンチームのサバイバルももちろん楽しいんだけど、ジル星とジル人の設定が面白いなぁと。

1万5千年という時を経て、その星には新たな命が育まれていて、でもかつてその星を汚染しつくした者達は、当然のようにその“新たな命”も自分達のもの、どうしようと自分達の勝手だと思っている。

ゴーショーグンチームがそこへ運ばれてくるぐらいなので、当然ジル星にもビムラーが関与していて、ジー達は「ビムラーを手にするのも我々の当然の権利」と思ってる。
でもビムラーが選ぶのは彼らじゃない。
“人間猿”と呼ばれる人達でさえない。

密林の奥で、ひそやかに知性を獲得していた翼ある黒豹。ビムラーが“宇宙へ飛翔する存在”として選ぶのは、“彼”なんだ。

「ここは、あなた達の星ではない。この星はあなた達が捨てた後も、この星で生き、育ってきたもの達のものだ」 (P220)

『ターンエーガンダム』のムーンレースと地球人の対立を思いだしたり。あれってパレスチナ問題だよな、と思ってたけど、“土地”って本当に誰のものなんだろう。どれくらい先祖代々住んでたら「そこは俺らの土地」って言っていいのか。今住んでる人と、かつて代々住んでた人と。

実のところジル星人は、「もうこの星無理だから新しい星探そ」と思って宇宙へ出たらしく、でもそうそうそんな居住に適した星なんか見つからなくて、仕方なく戻ってきたら母星が復活してた、ってことなんだけど、せっかく美しく再生したその星に、今度は自分達の方が合わなくなってしまってた。
星に居住したまま星の自然環境を良くしていければそれがベストだったんだろうけど、今のこの地球の状況を見れば、「そんなの無理」だよねぇ……。

あとがきで首藤さんが

本来、「ゴーショーグン」のPART1(※つまりテレビ本編)で登場人物の何人かは、死ぬ予定になっていました。死ねば格好よく人気もあがるだろうという暗い制作サイドの陰謀だった訳ですが(後略) (P234)

と書かれています。
本編で死ぬ予定だったのって誰だろ。「何人か」ってことは複数死ぬはずだったんだよね? ゴーショーグン側だとキリーかな? レミーちゃんを庇ってブンドル様が……とかありそう???
(今回も口絵の天野さん画ブンドルがとても美しい♪)
ともあれもちろんこの4作目でも誰一人かけることなく、再び宇宙のどこかへと流れていく6人。

同じくあとがきに、「おそらく彼らは“運命”との戦いを始めることになる」とあります。そう、この次はついに、『時の異邦人』だ!!!

1984年8月刊行のこの本で、首藤さんは

これから先、何冊「ゴーショーグン」が続くか、編集部の陰謀次第ですが、原作者は、こうなったら、テッテー的に続けるつもりです。 (P235)

とおっしゃっています。
この後『時の異邦人』のOVAとノベライズ、そして『はるか海原の源へ』と番外編が2作。『時の異邦人』を書いてしまったら、いくら「テッテー的に」と思ってももう後は番外編しかないよなぁ、とは思います。制作の時系列としては『はるか海原』の方が後だけど、どうしよう、どっちを先に読もうかな。


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